1997 Fiscal Year Annual Research Report
アロマテ-スと性ステロイド受容体の制御による脳の性分化メカニズム
Project/Area Number |
08458262
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
篠田 晃 近畿大学, 医学部, 講師 (40192108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中濱 健一 近畿大学, 医学部, 助手 (60281515)
長野 護 近畿大学, 医学部, 助手 (80155960)
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Keywords | アロマテ-ス / エストロゲン / アンドロゲン / 性ホルモン / 内側視索前野 / 扁桃体 / ステロイドレセプター / 性分化 |
Research Abstract |
昨年度までの実験結果により、ラット脳内最大のエストロゲン合成ニューロン群が存在する内側視索前野一扁桃体弓(mPO-AM)において、成獣雄ではアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現が強くエストロゲン受容体の発現が弱く、雌では逆にアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現が弱くエストロゲン受容体の発現が強いという雌雄に特徴あるパターンを示すことがわかった。このことを踏まえ、本年度は生直後の雌雄の去勢実験が行われた。その結果、雌ではアロマテ-ス、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体の発現パターンに大きな変化は見られなかったが、雄ではアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現が減弱し、エストロゲン受容体の発現が増強するという発現パターンの雌性化が見られた。さらに生直後に去勢された雄が生成熟レベルに達した後、ジヒドロテストステロン、エストロゲン、テストステロン、をそれぞれ投与して三者の発現の変化を観察した結果、ジヒドロテストステロン投与はアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現を増強させるがエストロゲン受容体の発現にはあまり影響がなく、エストロゲン投与はアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現をやや増強する一方エストロゲン受容体の発現を強く減弱させ、テストステロンの投与はアロマテ-スとアンドロゲン受容体の発現を増強させエストロゲン受容体の発現を減弱させることがわかった。これらの結果より、mPO-AMに発現するアロマテ-ス、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体は性ステロイドにより強い制御を受け雌雄における発現パターンが決定され、性ステロイドとその受容体発現が脳の性分化の過程で重要な役割を果たすことが示された。また、その過程で生殖機能に関わるこの領域のアロマテ-スは、局所的なアンドロゲンとエストロゲン環境のレベル調節を介して性ステロイド受容体発現を間接的に制御することで、脳の性分化を方向付けしている可能性が強く示唆された。
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