1996 Fiscal Year Annual Research Report
イタボヤ類におけるallorecognitionの機構解明
Project/Area Number |
08459005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
齊藤 康典 筑波大学, 生物科学系, 講師 (00196015)
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Keywords | イタボヤ / allorecognition / 群体特異性 / 拒絶反応 / 血球 / phenoloxidase |
Research Abstract |
イタボヤ類は固着性で無性生殖によって個虫を増加させ群体を形成する.従って,成長端で異群体と接触することもあれば,同一群体の成長端同士が接することもある.このとき相手が自己の成長端であれば癒合して一つの群体となるが,異群体であれば拒絶反応を示す.この認識反応を群体特異性と呼ぶ.群体特異性の癒合反応は調べられたイタボヤの全ての種で同じであるが,拒絶反応は種によっていくつかの異なる発現様式を示す.この発現様式の多様性は,今までの研究から,非自己成分を異物として認識できる部域が種によって異なるために生じているとされてきた.本年度の研究では,in vitro bioassayの開発のため,イタボヤ5種とイタボヤ類とは異なる科に属するが一番近縁な種であるコバンイタボヤの群体特異性について,特に,血球の機能に注目して拒絶反応に積極的に関与する血球を組織学的観察から同定した.その結果,Botryllus scalaris以外のイタボヤ類とコバンイタボヤでは,morula cell(MC)と呼ばれる血球が2群体接触域の被嚢中へ浸潤し壊死することで黒色化がおきていることが明らかとなった.一方,2群体間で血管の癒合がおきるまで拒絶反応の起こらないB.scalarisでは,血管癒合部でHyaline amebocyteが血球凝集の媒介や凝集塊の包囲化,そして貧食作用していたが,MCの積極的な拒絶反応への参加はなくて黒色化は示されなかった.そこで,黒色化の原因と考えられる血液中のMCのphenoloxidase(PO)の活性を前述のイタボヤ5種とコバンイタボヤで調べたところ,B.scalarisのMCはPOの活性が他の種と比して非常に低かった.これらの事実から,イタボヤ類が分化する以前から拒絶反応の中心的役割はMCが担ってきたこと,そして,拒絶反応の発現様式の多様性が認識部位の相違だけでなく血球の機能の変化にもよることが明らかになった.
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[Publications] 齊藤康典: "群体特異性のしくみ" 遺伝. 50・12. 35-40 (1996)
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[Publications] Y.Saito: "Humoral Factors in Tunicates" Progress in Molecular and Subcellular Biology"Invertebrate Immunology". Ser.15. 218-234 (1996)