Research Abstract |
省エネルギーや快適性の観点から建物の断熱・気密化が進んでいるが,気密化された建物では,隙間からの換気量が少なく質内空気質汚染が懸念される.この問題に対処するには,適正な換気計画に基づく換気システムを設置し,効率よく換気する必要がある.換気システムの設計法として,医療や工学等の分野で利用されているエキスパートシステム(以下ES)を用いることが考えられる.本研究では,ESを利用し,換気計算の専門家と同等の知識・知能を持つ,換気計算支援システムを構築するために必要となる知識ベースを作り上げることを最終的な目的とする.本年度は,ESのプロトタイプを構築するとともに,単室及び2室における空気質を診断した. 本システムの開発環境は,(1)ハードウェア:HP社製model 712-80,(2)OS:UNIX,(3)ツール:ハイブリッド型エキスパートシェル大創玄である.居住空間のモデル化では,(1)換気量と汚染質発生量を変数,(2)導入外気や汚染物質は室内で瞬時一様拡散し濃度一定,(3)CO_2を汚染物質,(4)ガスコンロ,石油ヒ-タ,人間の呼気を汚染質発生源とする.推論方法は後ろ向き推論であり,在室人数,作業状態,燃焼機具の容量,換気量を入力しそれを基に室内の汚染質濃度を求め診断する.ルール数は,単室が15,2室が51である.なお,2室モデルでは使われ方(居室か非居室)も考慮する. 診断を行った結果,以下の知見が得られた. 1)単室:(1)換気回数0.5回/h,在室人数4人以上では,診断結果が不適(汚染質の濃度が1500ppm以上)となる場合もある.(2)石油機具を使用するとき,換気回数1回/hでは,不適となる場合もあるが,2回/hでは適切(1500ppm未満)である. 2)2室:(1)換気回数0.5回/hでは,診断結果はほぼ適切である,(2)ガス器具を使用するとき,通常の倍の換気回数を必要とする。 3)各種の使用条件において,経験的知識とほぼ同様の診断結果が得られ,本システムの有用性が確認された.
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