1997 Fiscal Year Annual Research Report
軌道位相と軌道重なりによる活性分子の設計と高選択的反応制御のための手法の開発
Project/Area Number |
08555214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 博 京都大学, 工学研究科, 教授 (40026068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛野 博之 京都大学, 工学研究科, 助手 (30212179)
立花 明知 京都大学, 工学研究科, 助教授 (40135463)
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Keywords | 分子軌道計算 / 軌道解析 / エノキシシラン / プロトンスポンジ / 白金π-アリル錯体 / パラジウムπ-アリル錯体 / 触媒作用 / アノメリック効果 |
Research Abstract |
本研究では,分子の物理的,化学的活性が分子の局所構造とどのように関連するかを明らかにし,この結果に基づき活性分子の設計と反応制御のための手法の開発を行ってきた。本年度の主な成果は次の通りである。1.エノキシシラン化合物とアルデヒドとの反応は新たなC-C結合を生成させる合成反応として有用であり,活発な実験的研究が行われている。多くの場合,触媒としてルイス酸が必要であるが,シラシクロブタン環を有するエノキシシランはきわめて活性が高く,無触媒下で反応する。この高い反応性について非経験的分子軌道計算と軌道解析により考察し,アルデヒドの孤立電子対軌道と重なるケイ素中心の空軌道が,他のエノキシシラン類に比較して非常に高い電子受容性をもつことを明らかにした。2.芳香族縮合環をもつジアミンの中には,普通のアミン類に比較して異常に高い塩基性を示すものがある。1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンはその代表的化合物である。この化合物について非経験的分子軌道計算を行い,その高い塩基性がプロトンを取り込むことによる窒素の孤立電子対間に働く重なり反発の低減にあること,非対称水素架橋構造が電子供与能の位置による変化と密接に関連していることを明らかにし,プロトンスポンジとなるジアミンを設計するうえで考慮すべき因子を明らかにした。3.2-クロロ-2-プロペニル炭酸エチルは等量の白金錯体と反応して二酸化炭素がはずれ,p-アリル錯体あるいはシクロプロパン誘導体を与える。これに対し,触媒量のパラジウム錯体の存在下では,二酸化炭素が脱離したエトキシドが得られる。この違いを与える理由について非経験的分子軌道計算と軌道解析により検討し,電子の供与,逆供与における軌道の重なりに原因があることを明らかにした。4.有機化学において重要なアノメリック効果について軌道解析を行い,電子の非局在化と軌道の重なりの重要性を明らかにした。
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[Publications] K.Omoto, H.Fujimoto: "Electron-Donating and-Accepting Strength of Enoxysilanes and Allylsilanes in the Reaction with Aldehydes" Journal of the American Chemical Society. 119. 5366-5372 (1997)
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[Publications] E.Fujiwara, K.Omoto, H.Fujimoto: "Theoretical Study of Strong Basicity in Aromatic Diamines" Journal of Organic Chemistry. 62. 7234-7238 (1997)
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[Publications] K.Fukui, H.Fujimoto: "Frontier Orbitals and Reaction Peths" World Scientific, 543 (1997)
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[Publications] 藤本 博: "有機反応軌道入門フロンティア軌道の新展開" 講談社, 180 (1998)