1996 Fiscal Year Annual Research Report
アドリアマイシンを利用した心筋細胞特異的遺伝子の包括的クローニング法の開発
Project/Area Number |
08557048
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Section | 試験 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉林 正彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (00215047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山沖 和秀 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (70182409)
矢崎 義雄 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (20101090)
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Keywords | アドリアマイシン / 心筋細胞 / ミトコンドリア / 転写因子 / Id / TNFα / differential display / Jun-N-キナーゼ |
Research Abstract |
アドリアマイシンによっておこる心筋細胞の遺伝子発現の変化が、核内に存在する転写因子のレベルでおこっているか否かの検討のため、心筋細胞から抽出した核タンパクを用いてゲルシフトアッセイをおこなったところ、アドリアマイシン処理の心筋細胞では、筋特異的遺伝子の発現に重要なE-ボックスやMEF2部位への結合性が低下していた。また、differential display法により、アドリアマイシン処理の心筋細胞と処理していない心筋細胞との間で発現レベルが異なるmRNAをスクリーニングしたところ、明らかにアドリアマイシン、ダウノマイシン処理の心筋細胞にて、その発現レベルが変化しているクローンが得られた。塩基配列の決定により、発現が減少しているクローンは、Iron-sulfur proteinおよびADP/ATP translocaseの心筋特異的アイソフォームをコードしていることが判明した。Iron-sulfur proteinとADP/ATP translocaseはともに、ミトコンドリア内膜に存在し、細胞質内へのATP供給に不可欠なタンパクである。したがって、他の臓器に比較してより十分なエネルギーを必要とする心筋にとって、こうしたミトコンドリアタンパクの発現低下は、重大な影響があると考えられ、アドリアマイシンの副作用が、特に心筋障害としてあらわれることの一部を説明すると考えられる。また、アドリアマイシンによって、発現が誘導される遺伝子群の一つとして、分化抑制因子Idや、c-jun,c-fosなどの早期反応遺伝子群があった。そのプロモーター活性は、アドリアマイシンにより著明に増強し、その効果は、タンパクリン酸化酵素阻害剤H7にて特異的にブロックされた。また、最近、タンパク合成阻害剤やTNF-αなどにより刺激にて活性化されることが明らかにされたJun N-キナーゼ(JNK)とよばれるキナーゼの細胞内局在は、アドリアマイシンにより、TNF-α刺激時に見られるのと同様、細胞質から核内へと変化した。
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[Publications] Kunabayashi M.,Yazaki Y.: "Down requlation of Angiotensin II receptor Type1 in heart failure:A process of Adaptation or Deterioration?" Circulation. (in press). (1997)
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[Publications] Kurabayash M.,Yazaki Y: "Approach to the pathophysidogy of cardiovascular disease" International Angiology. 15(3). 187-194 (1996)
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[Publications] Suzuki T.,Katoh,H.,Watanabe,M.,Kurabayashi M: "A novel biochemical method for aortic dissection" Circulation. 93. 1244-1249 (1996)
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[Publications] Suzuki T.,Kim H-S.Kurabayashi M.: "Preferential Differentiation of P19 mouse embryonal carcinoma cells into smooth muscle cell" Circ.Res.78. 395-404 (1996)
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[Publications] Watanabe M.,Sakamura Y,Kurabayashi M: "Structure and characterization of the 5′-flanking region of the mouse smooth muscle myosin heavy chain SM1/2 gene" Circ.Res.78. 978-989 (1996)
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[Publications] Jeyaseelan R.Kurabayash M: "Doxorubicin inhibits Tat-dependent transactivation of HIV type 1LTR" AIDS Res.Human Retrovirus. 12. 569-576 (1996)
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[Publications] 倉林正彦,矢崎義雄: "強心薬 収縮と弛緩に関する分子生物学的機存" 篠山重威, 9 (1996)