1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08557090
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
秋元 成太 日本医科大学, 医学部, 教授 (50089752)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 智任 日本医科大学, 医学部, 講師 (60228492)
木村 剛 日本医科大学, 医学部, 講師 (20234354)
|
Keywords | 腎細胞癌 / 遺伝子治療 / 自殺遺伝子 / アデノウィルスベクター / HSV-TK |
Research Abstract |
化学療法や放射線療法に耐性の癌に対して、遺伝子治療は、新しい治療法としての効果を期待されている。泌尿器腫瘍の中で、腎細胞癌もまた手術以外に画期的な治療が存在せず、遺伝子治療の効果が期待されるものである。 自殺遺伝子と呼ばれる単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子とガンシクロビル(GCV)を用いる遺伝子治療は、種々の癌に対して試みられ、一部臨床にも応用されているが、その効果は未だ十分なものではない。 我々は、同治療に抵抗性を示す腎癌細胞株に対して、より高い薬剤感受性を持たせる目的でクローニングされたmutant HSV-TKを、アデノウィルスベクターを用いて腎癌細胞に導入し、有用性を検討した。(治療効果判定には、MTTアッセイ法を用いた。) 腎癌細胞株ACHN、Cakl2、VMRC、A498、A704のうち、ACHNはHSV-TK/GCVに抵抗性を示した。ところが、ACHNにmutant HSV-TKを導入した治療実験は有効であり、さらにACHNを除く4つの細胞株においても、mutant HSV-TKを用いた場合、従来のHSV-TKに比べて、治療効果は増強され、GCV投与量はは1/3倍から1/2倍量で、同等の治療効果を示すことがわかった。 従来の自殺遺伝子を用いた遺伝子治療が、ヒトの臨床治験において十分な効果をあげられない理由の一つとして、HSV-TK/GCVに抵抗性の腫瘍細胞の存在が推測され、本実験結果は今後の遺伝子治療に重要な意味を持つと考えられる。 加えて、HSV-TKを用いる自殺遺伝子治療において、dose dependentに増加する肝毒性などの副作用が問題となるGCVの投与量を軽減でき、身体への安全性を高めることが可能になるという点においても、本実験の結果は大きな意義を持つであろう。
|