1996 Fiscal Year Annual Research Report
胃内細菌ヘリコバクター・ピロリの実験動物における感染病態モデルの作製
Project/Area Number |
08557132
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Section | 試験 |
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岡部 進 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90012624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 妙 京都薬科大学, 薬学部, 副手 (70278448)
西野 武志 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (50097838)
高橋 悟 京都薬科大学, 薬学部, 助手 (20268098)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / ラット / マウス / 感染 / 胃潰瘍 / 除菌 |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染モデルの作製をラットおよびマウスにおいて検討した。感染性の強い1型HPを経口的に投与し、胃粘膜への生着、病変の発生などを観察した。HPは正常ラットには感染しえなかったが、あらかじめ胃潰瘍を有するラットには感染することが認められた。潰瘍の状態によってはHP感染により肉眼的な治癒が遅延することもみられた。このとき,胃粘膜内で有意に炎症性パラメーター値が増大し、組織学的にも治癒は増悪していた。今後、実験条件をさらに改善していくことにより、病変の変化を伴ったHP感染モデルがラットにおいて確立できるものと考えている。また、ラットでのモデルではHPの関与する胃粘膜病変についての解析も可能であると思われる。一方、正常マウスにHPを接種したところ、HP感染が認められた。この感染は1年にわたって安定な持続感染であった。感染1ヶ月後から抗HP抗体の存在が血清中に確認された。しかしながら、胃粘膜病変の発生には数カ月を要し、その程度も非常に軽度なものであった。好中球の浸潤を認める胃炎は発生したが、出血性病変や潰瘍の発生はおこらなかった。薬物のHP除菌効果を検討したところ、アモキシシリン、クラリスロマイシンといった臨床上使用されている抗生物質により、胃内HP生菌数は用量依存的に有意に減少した。酸ポンプ阻害薬ランソプラゾールはほとんど影響を与えなかった。このようにマウスでのモデルはHPによる病変についての研究にはやや不向きであるが、HP除菌薬物の評価という点においては簡便で有意義なものであると考えられる。
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