1997 Fiscal Year Annual Research Report
現象学的な観点から見たマイノング対象論の現代的意義
Project/Area Number |
08610003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 英明 中央学院大学, 商学部, 講師 (70192599)
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Keywords | 現象学 / 対象論 / マイノング |
Research Abstract |
当初の研究計画にしたがい、マイノング対象論に関する最近の研究動向の分析、新たな観点からのテキストの解読の試みを継続した。特に、ラッセルが、論文「指示について」において記述理論を提示する際にマイノングに対しておこなった批判の意味を再検討することを中心に、考察をすすめた。マイノングは、トワルドウスキーがその著書『表象の内容と対象の理論について』で論じた「関係項の一方が存在しない関係」を容認するが、それに対し、ラッセルはそうした関係をいっさい認めず、いかなる関係においても関係項は存在すると主張する。マイノング対象論における「純粋対象の超存在」という概念は、そうした対立に由来するものであり、他方、ラッセルの記述理論も、この前提ぬきに正しく理解することはできない。対象論と記述理論の対立の出発点ともいえるこの「関係項の一方が存在しない関係」に関する分析は、論文「表象の内容と対象」(『東北哲学会年報』第14号)として発表した。 また、対象論と密接な関係にある「無対象的表象」の問題をめぐるフッサールとマイノングの関係を「現象学的還元」という方法を中心に分析するために、「現象学的還元」と言語との関係についての考察をおこなった。その成果は、論文「フッサールの本質直観理論と私的言語批判」(『中央学院大学人間・自然論叢』第7号)として発表した。 平成10年1月以降は、現代の認知科学と対象論との関係を検討するための準備として、特に意識内における記号の在り方についての考察をすすめ、その成果の発表準備中である。
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