1998 Fiscal Year Annual Research Report
現象学的な観点から見たマイノング対象論の現代的意義
Project/Area Number |
08610003
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Research Institution | CHUOGAKUIN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 英明 中央学院大学, 商学部, 講師 (70192599)
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Keywords | 現象学 / 対象論 / マイノング |
Research Abstract |
当初の研究計画にしたがい,マイノング対象論に関する最近の研究動向の分析,新たな観点からのテキストの読解の試みを継続した.今年度は研究成果の総括として,特に現代の認知科学との関係に焦点を当て,研究をすすめた。まず,現代の認知科学と対象論との関係を検討するための準備として,特に意識内における記号の在り方についての考察をすすめた.意識内の記号的把握という視点からマイノングおよびフッサールの立場を捉え直すことで,「思考の言語」をめぐる現代の認知科学との関連を明らかにすることを目指した。その際,存在しない対象の意識内における記号的な把握の仕方に注目することで,マイノングの対象論に,新たな観点から考察を加えられることになるからである. フッサールの「ノエマ」概念は,感覚的所与に対する意味付与作用としてのノエシスの相関者として位置づけられている.それは,意識内の感覚的所与を一種の記号トークンと見なして,記号系を構成することに他ならない.その際,フッサールは意識内の記号系が,現実の記号系にまったく制約を受けないと考えている.しかし,問題はそのような記号系の構成が可能か否かという点にある.その意味で,この問題は,「思考の言語」をめぐる今日の心の哲学の論争につながる論点を含んでいる.以上の研究成果は,論文「意識内の記号」 (『理想』第661号)として発表した. 対象の存在を前提とせずに意識と対象との関係を論じるマイノングの議論が今日の認知科学との連関においてどのように位置づけられるのかを検討する際にも,意識内の記号の在り方が問題となるものと考えられる.そこで,平成11年1月以降は,現代の認知科学における心的内容や「思考の言語」に関する理論についての考察をすすめ,マイノング対象論との関係を考察し,その成果の発表準備中である。
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