1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610013
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中川 純男 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60116168)
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Keywords | アウグスティヌス / 真理 / 判断 |
Research Abstract |
アウグスティヌスにおける真理概念は、彼以前の哲学、とりわけヘレニズム期の哲学および新プラトン主義の哲学における真理概念を継承しつつもいくつかの点で独自である。本研究においては、アウグスティヌスにおける真理概念の形成過程において重要な位置を占めていると考えられる『教師論』を中心に、ヘレニズム期のストア哲学およびプロティノスの哲学と比較しつつ、真理概念の分析を行った。その結果、アウグスティヌスの真理概念の独創性として次の二点が明らかとなった。まず第一に、真理は判断が真である根拠ないし規準であると考える点でアウグスティヌスの真理概念は伝統的であるが、真なる判断だけでなく偽なる判断も判断であるかぎり真理に何らかの関わりを持っていると考える点において独自である。すなわち、アウグスティヌスは、偽なる判断もそれが真偽についての主張を含んでいるかぎり何らかの仕方で真理と関わっていると考えた。このようなアウグスティヌスの考えは、真理の「超越的性格」を付与した上でその超越性の意味を明確にするものであるとともに、真理に開かれたものとしての人間存在の独自性を明確に規定するものとなっている。この点と関係しつつ第二に、偽なる判断についてもそれを偽であると認めることは真であるという形で、アウグスティヌスは、外界の対象認識とは区別された精神独自の働きとして真偽の判断を規定した点において独自である。このことは人間精神を外界の認識とは区別された固有な認識が成立する場として捉えることを可能にし、アウグスティヌスの真理概念が西欧における人格概念の形成と深く関わっていることを告げている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 中川純男: "ことばと真理-アウグスティヌス『教師論』における問題の所在" パトリスティカ-教父研究,教父研究会. 3号. 5-17 (1996)
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[Publications] 中川純男: "キリスト教的生における「観想と実践-アウグスティヌスにおける" 観想と実践,慶應義塾大学言語文化研究所. 109-128 (1997)
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[Publications] 中川純男: "生きることの意味-アウグスティヌスの幸福論" 国士舘哲学,国士舘大学哲学会. 1号. 3-15 (1997)
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[Publications] 中川純男: "significareとpraedicari-トマス『有と本質』における" 人間存在論、京都大学大学院人間・環境学研究科. 3号. 477-486 (1997)
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[Publications] 中川純男: "自己知-新プラトン主義の論理とその射程" アルケー、関西哲学会. 5号. 11-20 (1997)
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[Publications] 中川純男: "secretiore indigentia-Augustinus,Conf.III,1,1" 中世哲学研究,京大中世哲学会. 17号. 1-17 (1998)