1996 Fiscal Year Annual Research Report
生物と時間-アリストテレス生物学における時間把握の視点-
Project/Area Number |
08610015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
篠澤 和久 山形大学, 人文学部, 助教授 (20211956)
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Keywords | アリストテレス / 生物学 / 時間 / 感覚 / 霊魂論 |
Research Abstract |
生物学関係のアリストテレスの著作<時間>という視点から捉え直すことが、本研究の課題であった。 1.本年度はまず、これまでの研究課題であった『詩学』における時間の問題を検討した。これによって、アリストテレスは悲劇論という文芸批評(創作論)的な論考においても、生物学主義的な時間概念を考察の原理的指針としていることが確認された。 2.つぎに、『霊魂論』(De Anima)、『感覚論』(De Sensu)などのテクストを時間への言及箇所に注目しながら読み直すことによって、今後取り組むべき問題の見通しを得た。 アリストテレスは、たとえば『感覚論』において、生物(動物)の重要な特徴として、<覚醒と睡眠><若さと老い><息を吸い込むことと吐き出すこと><生と死>というペアを列挙している。これら4つの対項目は、一見したところ、相互には連関がないように思われる。しかし、時間の観点から整理すれば、アリストテレスの意図するところは明瞭である。すなわち、<生と死>は一つの生命個体にとって一番大きなサイクルを、<若さと老い>はそのサイクルの前半と後半を、<覚醒と睡眠>は一日のサイクルを、そして<呼吸>はより小さなサイクルを表示する生命現象である。アリストテレスは、このように、生命的存在者を多層的・重層的な時間層をもつ構成体として定めようとしているのである。 3.次年度は、この基本的なモチーフをより具体的に探査し、できれば、現代の生物学的な知見との比較検討を行ないたいと考える。その際、とくに感覚の分析で言及される時間概念の捉え方にも注目してみたい。
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