1996 Fiscal Year Annual Research Report
1860年代の中国の西洋認識と斌椿使節団に関する研究
Project/Area Number |
08610016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
手代木 有児 福島大学, 経済学部, 助教授 (20207468)
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Keywords | 伝統的世界像 / 華夷関係 / 西洋体験 / 張徳 / 郭崇 / 劉錫鴻 |
Research Abstract |
研究代表者は、数年来、清末の外交官張徳 (1854〜1921)が、一八六六年中国最初の西洋使節=斌椿使節団に参加した際の西洋認識に、伝統的世界像の大きな変動を見出せることに注目してきた。本研究は、彼の西洋認識を、使節団を派遣した恭親王政権や、同行の中国人と比較検討し、また使節団に深く関与したロバート・ハートらの意図と対照するなどにより、西洋体験を契機とした張における新たな世界像の形成を明らかにし、清末の西洋との衝突が伝統的世界像にどう影響したのかを探ろうとするものだった。 本年度前半は、当初の計画にそって基本的文献の収集・閲読に費やした。その結果、使節団参加時の張徳 が、当時としては極めて新しい世界像を有してたことへの理解は、従来以上に深まった。だが同時に本研究の対象を同時代に西洋に駐在し深い西洋理解を有していた他の知識人にも広げることで、清末における伝統的世界像の変動をより大きなスケールで捉えられるのではないかと考えるにいたった。具体的には、洋務運動が生んだ新タイプの知識人とは対照的に、旧タイプの知識人ながら対立関係にあった郭崇 、劉錫鴻に注目し、彼らの世界像が、西洋体験によって如何なる影響を受けたか、対比的に検討を試みることとした。 そこで今年度後半は、張徳 が七〇年代の西洋滞在中に残した日記、それに郭崇 、劉錫鴻の同時期の日記、秦稿など、新たに相当量の文献の収集、閲読につとめた。その結果、三者の関係は、(1)伝統的世界像における「華夷」関係の接近(劉錫鴻)、(2)「華夷」関係の逆転(郭崇 )、(3)「華夷」(唯一文明)関係から「中西」(複数文明)関係への転換(張徳 )、と整理し得るとの見通しを得るにいたった。今後関係資料を基に細部の詰めの作業を進め、成果をいくつかの論文にまとめていく予定である。
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Research Products
(1 results)