1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610024
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 章悟 東洋大学, 文学部・印度哲学科, 助教授 (50277349)
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Keywords | 中央アジア / サンスクリット写本 / ギルギット写本 / ガンダーラ / 般若経 / 戒波羅密 / カローシュティー |
Research Abstract |
本年度は三年間の研究の最終年度にあたるため,過去二年間に収集した文献や写本の複製類を整理し,これらを分析した結果を体系的にまとめ,中央アジア仏教の解明に当てることに努めた.特に第一年度,二年度を通じて,中央アジアの仏教に関する参考文献類及び,中央アジア出土の仏教梵語の写本類(マイクロ化,焼き付け,コピー等)を幾つか選択して入手した.もちろん総合的,網羅的に収集することが望ましいが,それは物理的に不可能であるし,そのような資料を分析することは個人の能力の限界を越えるものである.そこで,主に初期大乗経典類に限定し収集し,研究を行なってきた. 今回の研究は,中央アジアから発生した仏教思想の特質と,中央アジアでなされた仏教の実態を解明することが,その目的であった.しかし,この分野は未開拓の領域が多く,ほとんど独自に調査しなければならないということもあって,完全に解明できたものはそう多くはない.しかし,研究成果で記したように,中央アジア仏教の役割について,新たな発見も幾つかある.それは簡単に言えば,中央アジアの仏教の独自性ということである. 従来,中央アジアの仏教には,発生地としてのインド仏教と中国・チベットなどその周辺地域を繋ぐ役割を付与するに過ぎなかった.しかし,この地域の仏教はかなり複雑な発展を示しており,思想的にも文献学上でも独創といってよいものが多々ある.特に中国仏教に対する影響は計り知れない.その点では中国仏教はインド経由と言うより中央アジアに端を発して形成された仏教という評価も成り立つほどである.この根拠を実際にいくつかの梵語写本を分析して明らかにすることができたと考える.
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Research Products
(2 results)