1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610026
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
森 雅秀 高野山大学, 文学部, 講師 (90230078)
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Keywords | オリッサ州 / カタック地区 / 密教美術 / 不空羂索観音 / 八大菩薩 / エローラ / パーラ朝 |
Research Abstract |
これまでにすすめてきたオリッサ州カタック地区から出土した図像資料を中心とした画像データベースと、各作品の主題、規模、表現方法、年代、出土地、素材、様式等に関するデータを整理し、カタツク地区の密教図像の全体の傾向を解明した。その内容を「オリッサ州カタック地区の密教美術」として 国立民族学博物館研究報告第23巻第2号に発表した。その結果、如来、菩薩のグループにおいては、オリッサの独自性が顕著であり、これに対し、女尊や盆怒尊では、比較的、パーラ朝の密教美術に近い傾向を有することが明らかになった。従来、インドの密教美術は、パーラ朝の版図であったビハール地方とベンガル地方の出土品を中心として論じられることが多かった。しかし、今回の研究においてオリッサ州、とくにカタック地区から出土した作品のデータを網羅的に集積し、尊像の種類や図像学的特徴をてがかりに分類することによって、同じ密教美術でありながら、オリッサにはパーラ朝とはことなる独特の図像体系があることが判明した。 さらに今年度は、オリッサ地方で独自の図像体系を有する菩薩のグループの中で、とくに注目される不空羂素観音と八大菩薩について研究をすすめた。その結果、不空羂索観音に比定される四臂観音立像の様式やモチーフは、オリッサ内部やパーラ朝の版図からではなく、西インドの石窟寺院、とくにエローラ石窟と密接な関係があることが明らかとなった。また八大菩薩に関しては、これまで等閑視されてきた周囲の人物像が、『不空羂索神変真言経』などがあげる八大菩薩の眷属尊の一部に合致していることが解明された。これらの尊格はわが国の「胎蔵図蔵」や「胎蔵旧図様」にも見られ、わが国の密教美術の成立にも関係する。これらの点については「科学研究費補助金研究成果報告書」において詳しく述べた。
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[Publications] 森 雅秀: "オリッサ州カタック地区の密教美術" 国立民族学博物館研究報告. 23(2). 359-536 (1998)
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[Publications] 森 雅秀: "『アビサマヤ・ムクター・マーラー』所説の108マンダラ" 高野山大学密教文化研究所紀要. 12. 1-105 (1999)
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[Publications] 森 雅秀: "ミトラヨーギン著『アビサマヤ・ムクター・マーラー』所説のマンダラ" 密教学研究. (発表予定). (1999)