1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
窪田 高明 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80195502)
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Keywords | 中世神道 / 伊勢神道 / 修験道 / 両部神道 / 正道 / 山岳信仰 |
Research Abstract |
3年に渡る研究の初年度であり、過去の研究成果の確認、最近の研究動向の検討、基本的な文献、研究に必要な機器備品の購入を行い、研究の基礎設定を行った。 その結果、次のようなことが認識された。従来の中世の神道を対象とする研究の欠点は、それを積極的に評価するにせよ、消極的に評価するにせよ、神道という存在を実体として想定することにあったといってよい。それを踏まえ、最近は宗教、宗派の枠組みを一旦離れ、信仰の現実そのものを再認識することに比重が置かれている。例えば、昨年の神童宗教学会のシンポジウムでも、このような意見を語る研究者があり、このような認識がある程度共有されていることがわかる。現在、新しい研究においては、従来軽視されていた文献を再評価したり、当時の政治経済的事実や宗教界の人間関係を発掘するといった方法が取られることが多い。 しかし、このような研究が新しい中世像を提出しているかといえば、まだそのような成果は生み出されてはいない。その原因は、一つには研究の量的な不足にあるといってよい。しかし、同時に新しい「事実」に頼るという姿勢にも問題があることは否めない。客観的な事実のみに根拠を求めることは、実証主義を標榜する研究の弱点であり、新しい神道研究がこのような弱点みを克服することを一つの目標としているにもかかわらず、それが自覚的に踏まえられていない点に問題があるようである。 このような現状に対し、当時の精神世界をどのように構想するかという思想研究の基本に立ち返り、辺緑的な文献・現象を再評価する一方、中心的な文献・現象の再解釈を重視し、思想史の中で日本人の精神世界に新しい視点を見出すよう配慮して、研究を進めたい。
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