1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
窪田 高明 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80195502)
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Keywords | 中世神道 / 伊勢神宮 / 修験道 / 両部神道 / 正直 / 山岳神道 / 結婚式 |
Research Abstract |
今年度は、山岳信仰関連の縁起を中心に研究を行った。日本の神道信仰において、縁起は、単に寺社の成立過程を記録した文献にとどまらない重要な意味をもっている。縁起こそは、日本人の信仰の実態をもっともよく表現したものといわねばならない。縁起を考える場合、もちろんその内容を十分に分析することが欠かせないが、一方で縁起という表現の形式自体の意味を考察する必要がある。信仰が、特定の時間と場所における神仏の出現と寺社の成立というパターンをとった表現を要求するということは、宗教において一般的なことではなく、日本人の信仰や思考において特徴的な事柄なのである。 そこには、信仰を普遍的な超越者のかかわりと考える「大きな」宗教に対し、あくまでも自己が生きている時空との特殊なかかわりの中に超越者を捉えようとする傾向がある。この傾向は、仏教のような「大きな宗教」の受容によって放棄されたのではなく、「元興寺縁起并流記資財帳」などの初期の寺院縁起に見られるように、むしろ仏教との接触によって顕在化し、その後の仏教受容においても、日本化の形式的方法として機能したと思われる。 また、このような信仰の機能が、現代の本人の論理規範に与えた影響についても考察した。その形態と評価は時代の社会の構造によって大きな変化を被ったにもかかわらず、基本的な信仰観念は超越的なるものの原像として、人々の心から去ることはなかったように見える。その具体的な事例として、近現代における婚姻儀礼において、近代合理主義的な思考の一般化の中で、神道結婚式の成立という現象をあげることができる。結婚式のように一般的な現代人の生活の一部にも、縁起という形式と共通する発想の信仰が継続していることは、過去の神道思想を考えるにあたっても、留意するべき事実だと思われる。
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Research Products
(1 results)