1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
村上 保壽 高野山大学, 文学部, 教授 (30004047)
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Keywords | 空海 / 密教 / 自然観 / マンダラ / 共生 / 宇宙観 / エコロジー |
Research Abstract |
空海のエコロジーの思想を研究する上で、まずエコロジーの概念とその思想的展開を明確に把握する必要があった。そのために、基礎的作業として現代の環境学及びエコロジー関係の文献資料を厳選して収集し、それらに目を通すことが出来た。そして、コンピューターに資料を入力しながら整理した。 その結果、今日においてこのテーマは、生命倫理とも関連しているが、むしろ人間の生命観を人間のドグマチックな視点を超えて、地球そのものの在り方(生命)との関係から捉えようとしているところに新しい観点のあることがわかった。その意味において、人間だけでなく自然界の一切の存在者をその共通の生命ともいうべき大日如来の現象であると捉える密教とくに空海の曼茶羅思想は、人間の生命の実体とは地球あるいは環境の生命そのものの反映であると捉える今日のエコロジーの思想と本質的に共通していることが明らかになった。 さらに、最近のエコロジーの思想が地球上の一切の存在者の在り方を環境保護の視点から救済論的に問題にするのではなく、そのレベルを越えた共生の関係を捉えようとしている。その意味では、空海の思想にある共生の理念は衆生の救済論ではなく存在の認識論であるとするならば、西洋思想を母とするエコロジーに新たなる父なる視点を与えうることが出来るのではないかと思われる。したがって、空海の思想におけるエコロジーの研究は、21世紀のテーマである「生命と環境」を考える上で大いなる示唆と方向性を与えうることが明らかになると思う。
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