1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto College of Art |
Principal Investigator |
川田 都樹子 京都芸術短期大学, 造形芸術学科(美学美術史研究室), 専任講師 (00236548)
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Keywords | フォーマリズム / 形式 / 美術批評 / モダニズム / 近代 / ハーバード・リ-ド / ロジャー・フライ / 形相 |
Research Abstract |
本年度はまず「形式」にまつわる概念の変遷の概略をつかむことができた。芸術の「内容」と「形式」の対立は、古くはヘレニズム・ローマ期の文芸論争にみられた。それは、詩の思想内容(プラグマ)と言語形式(レキシス)のどちらを重視するかの問題でり、ひいては知性と感覚との対置だった。モダニズムの美術批判における「フォーマリズム」も、一般に「内容」を軽視して「形式」だけを重んじると考えられがちである。確かに、例えばハーバート・リ-ドは、造形芸術に関しては「物理的な諸要素」の分析を理論上は勧めていた。ロジャー・フライやクライヴ・ベルから継承した考え方である。だが、実際のリ-ドの批評は、むしろ「詩的心情」に重きを置くなど、理論と実践の間に齟齬があった。そもそも知性や精神性を欠いた感覚だけで芸術を真に享受することなど不可能であろう。 「形式(フォーム)」とは本来、「内容」を入れる静態的な容器ではない。例えば、アリストテレスの言う「形相(エイドス)」の語は、「質料(ヒューレ-)」に対置され、質料を生成変化させる「能動的な形成原理」であり、また、生成物の本質の定義にさえあった。こうした能動的な「形相」の所在が、素材に「かたち」を与える人間の側により引きつけられ始め、プロティノスの「内在的形相(エンドン・エイドス)」やシャフツベリの「内的形式(インワード・フォーム)」を経て、やがてカントら主観主義の台頭とともにさらに人間に内面化され、クローチェにたっては「直観」が即「形式」となる。美術史が様式史として語られ、造形芸術が視覚的形式の問題となっていくモダニズム期になると、芸術の「内容」とは常に「形式的内容」とみなされ始め、むしろ「形式」と「内容」とは分離しがたくなったのだといえる。ロジャー・フライら、この時期の美術批評家たちも、視覚的形式を通して超感覚的・精神的なものに向かっていたのであり、決して「内容」を軽視したのではないといえる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 川田都樹子: "書評 谷川渥著『見ることの逸楽』" 『国学院雑誌』(国学院大学紀要). 第97巻7号(通巻1071号). 74-79 (1996)
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[Publications] 川田都樹子: "書評 西澤栄美子著『書物の迷宮』" 『映像学』(日本映像学会). 第57号. 96-100 (1996)
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[Publications] 川田都樹子: "「<ジャンヌ・ダルク>はこうして造られたーシンディ・シャーマンをめぐる批評界の動き」" 『美術手帖』96年10月号(美術出版社). 第48巻732号. 65-72 (1996)
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[Publications] 川田都樹子: "「<アヴァンギャルド>の展示空間を読む-<ホワイト・キューブ>とそれ以前のアメリカ」" 『武蔵野美術』(武蔵野美術大学). 第104号. 近刊 (1997)
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[Publications] 原田平作・神林恒道編(川田都樹子): "『芸術の楽しみ;やさしい芸術学』(共著)担当「『芸術』の現代」" 晃洋書房, 221(14-26) (1996)
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[Publications] 藤枝晃雄・馬杉宗夫・物部晃二編(川田都樹子): "『芸術の理論』(共著)担当「形式とは何か-『形式』概念の変遷から考える」" 武蔵野美術大学, 137(89-102) (1996)