1996 Fiscal Year Annual Research Report
中国人物画の研究(明治宮廷画家、職業画家の作品とその主題を中心に)
Project/Area Number |
08610064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 法子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20135601)
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Keywords | 道教画題 / 宋元の寺観壁画 / 明代職業画家 / 童子・子供・唐子の表現 / 宮女図 / 八仙図 / 風俗画 / 仏伝 |
Research Abstract |
中国明代職業画家、宮廷画家による人物画研究の第一段階として、特に民間で吉祥的な画題として好まれていた、八仙など道教的主題や、子供を描いた作品とその表現についての考察を行った。それらは長寿を祝い祈願する画題として、また子孫繁栄の表現として、明代以降定型化した作品が多く残っているが、その前段階を示す遺品は少ない。まず、各主題について明の職業画家の作例を出版物などから網羅的に集めると同時に、時代を遡りそれに至る過程を明らかにするための資料収集を行った。その結果、道教人物や子供のいずれの主題も、比較的多く遺品が残っている仏教美術の人物表現と深く関連していることが注目された。特に宗元明の仏教壁画について資料を集めた結果、それらの画題や表現が、道教的主題と深く関わることが、具体的に明らかになった。とりわけ仏伝表現は風俗画的な要素を多分に含み、各時代の民間の人々の希求を色濃く反映していることもあって、関連が深い。今後、仏教と道教の間の、また宗教的な表現と世俗的な画題との間の主題や表現の相互の行き来の状況と、その時代による展開を絵画ばかりでなく、工芸品などにも目を向けつつ、文献資料も探査しながら跡づけていきたい。 また、子供や童子の表現は、上述のような壁画などの仏教主題との関わりばかりでなく、宮廷画家の画題であった宮女図とも関係が深いために、伝世品の人物画に特有の未解明の問題、すなわち唐画とその後の代々の模本の時代判定の困難さが、つきまとう。しかし、そのためにも、特に明代の宮廷画家や職業画家による模本そのものや、模本が描かれた背景について解明することが必要になる。今年度は、同一原本によって、宋や元、明などいくつかの模本が存在する作品の調査と、その比較検討、関連資料の蒐集を中心に行った。 以上いずれの主題についても、資料や文献などが多岐にわたり、必ずしも同一に扱えない問題もあるため、今後の作業の展開によっては、両者を同時に扱うよりも、いずれか一方に重点を置き、まとめの作業に入ることも検討しなくてはならないだろう。
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