1997 Fiscal Year Annual Research Report
中国人物画の研究(明代宮廷・職業画家の作品とその主題を中心に)
Project/Area Number |
08610064
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 法子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20135601)
|
Keywords | 中国人物画 / 明代職業画家 / 画題と技法 / 神仙像 / 宮女図 / 子供(唐子)主題 |
Research Abstract |
中国の人物画について、絵画の受容者層の増大とともに、職業的な画家や文人画家の活動が活発になり、しかもその境界が暖昧になっていく明代の状況から考察した。当時の広範な人物画制作の実際を作品と画家、主題に即して分析し、当時に行われた人物主題絵画と技法と主題の連関、画家の立場による差異を、明以前の人物画制作との関連やその変遷に着目しつつ、資料収集と考察を試みた。 唐代以前絵画主題の中心であった人物画は、宋以降も常に復古という形をとって、宮廷画家や文人の主題となっていた。だが主題や、白描と彩色画などの技法も、画題や画家の立場によって棲み分けが行われ、明代には、人物画への需要の大きさによる隆盛のなかで、それが明確に意識的に行われたことが、本件研究の過程を通じて次第に明らかになった。 特に、明代の作品が多く残る八仙や女神などの神仙像や、宮女図などの女性の画題や子供(陶磁器の文様にも多く用いられ、日本では唐子と称された)の主題について、明代に至る主題の変容と画家の関係の大きな流れを把握し、明代の人物画の分類、特徴を考察した。これらの作業は、様々な立場の画家の様々な作品が数多く残る膨大な明代絵画の全体像把握のための筋道を見極めることにも繋がるであろう。そして、特定の図像や主題が、特定の技法と深く結びつき、さらにそれをになった画家の立場にも強く関連していることを、時代ごとに示すことによって、従来の模本の多さによって様式的編年による人物画研究が進まなかった現状に有効な、新たな視点を提供することへも繋がると考えられる。 尚、研究を遂行するに当たっては、収集した写真資料などのデジタル画像化によるデーター整理を試みてきたが、現在、その点に関しては、データー構築のための基礎作業を終え、あとはより多くのデーターを順次入力する段階に来ている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 宮崎法子: "女性の消えた世界" 美術とジェンダー-非対称の視線(ブリッケ刊). 129-155 (1997)
-
[Publications] 宮崎法子: "中国の仏伝表現(唐-明)" シルクロード学研究センター報告書.仏伝美術の伝播と変容. 71-83 (1997)
-
[Publications] 宮崎法子: "伝銭選筆宮女図 解題" 『泉屋博古 中国絵画』. 157-158 (1996)