Research Abstract |
本研究においては,人が,同時に提示される複数の刺激を同定し,それらの刺激の中から特定の刺激を選択的に検出するときの処理過程の特徴について,系列・並列処理の観点から実験的に検討することを目的とした.提示刺激を同定する過程には,感覚的受容と同定判断過程が含まれ,特定刺激を探索的に検出する過程には,記銘内容の想起,提示刺激の検出,照合などの諸過程を経ると考えられる.そこで本研究では,これらの下位的処理過程それぞれにおける特徴について,4つの実験によって調べた. 実験1では,文字刺激の感覚的受容と文字の同定判断過程を中心に検証を行った.その結果,感覚的受容過程においては系列的処理が見られたが,その後の同定判断過程においては,並列的処理がなされることが判明した. 実験2では,色の同定過程について実験1と同様の目的のもとに検証した.その結果,検出すべき色数の増大とともに反応時間は直線的に増大し,系列的処理を示した.しかし,被験者によっては並列的処理が見られた. 実験3では,記銘された特定文字を複数文字の中から検出する場合の下位処理過程について調べた.その結果,記銘文字の想起過程,提示文字の検出過程いずれにおいても,系列的処理が行われることが判明した.また,OR課題,AND課題,OR・AND課題いずれにおいても,系列的処理が見られた. 実験4では,実験3と同様の問題を色の検出課題において検証した.その結果,提示色の検出過程においては,並列的処理がなされることが見出された. 当初計画した文字と色相の2次元的検出課題についての実験は,被験者の判断の振れが大きく測定が不能であったため,今回は報告できる段階に至らなかった.
|