1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610080
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 潤 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (70152931)
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Keywords | 潜在記憶 / 反復プライミング / 意識 / 音楽 / 聴覚情報処理 |
Research Abstract |
本研究は、音楽情報に関する潜在記憶の性質を検討しようとするものであった。潜在記憶とは想起意識を伴わない記憶であり、想起意識を伴う顕在記憶と対照される概念である。潜在記憶は、先行提示された刺激と同じ刺激が後続して提示された場合、その処理が促進されるという反復プライミングによって調べることができる。本研究は特に音楽情報に関して反復プライミング効果を検討することが目的であった。本年度は主としてメロディー情報に関する反復プライミング効果を検討した。 メロディーに関する反復プライミング実験は次のように実施した。まず、学習段階では、8音で構成されたメロディーがランダムに提示され(提示時間は4.8sec)、被験者の半数ずつに全体的処理(長調短調判断)と部分的処理(メロディー中に第1音と同じ音がいくつあったかの判断)を求めた。続くテスト段階では、学習段階で提示されたold刺激にnew刺激を加え、ランダムに提示した(提示時間は1.6sec)。被験者は、各メロディーが音階上の音で構成されているか、音階には存在しない音(50centずれた音)を含んでいるかの判断を求められた。その結果、全体的処理を行った場合のみold刺激に対する判断がnew刺激に対する判断よりも優れるという反復プライミングが見られた。部分的処理を行った場合には見られなかった。また、音階に存在しない音を含んだメロディーについては見られなかった。これらの結果は、われわれが、メロディーを潜在的に記憶していること、そしてそれはメロディースキーマにに一致するメロディーを一つのユニットとして処理した場合のみに限られることを示している。 本研究で明らかになったことは、メロディー情報に関する潜在記憶が存在すること、そしてそれは符号化の仕方と刺激の特性に依存していることであり、今後の潜在記憶研究に示唆を与えるものと考えられる。
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[Publications] 川口潤・木暮照正: "漢字・疑似漢字・非漢字の潜在記憶-反復プライミングにおける語彙情報・視覚情報の効果-" 日本心理学会第61回大会発表論文集. 829 (1997)
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[Publications] 三雲真理子・川口潤: "非言語情報の潜在記憶(4)-音高系列の潜在記憶(1)-" 日本心理学会第61回大会発表論文集. 825 (1997)
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[Publications] Kawaguchi,J., & Kogure,T.: "Implicit memory for Kanji,pseudo-Kanji and non-: Contribution of perceptual and lexical factors to repetition priming." Abstracts of Fifth European Congress of Psychology,. 393 (1997)
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[Publications] 川口潤・木暮照正: "漢字・疑似漢字・非漢字の潜在記憶-音韻処理の効果-" 日本基礎心理学会第15回大会. (1997)
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[Publications] 川口潤: "苧阪直行(編)脳と意識 朝倉書店" 潜在記憶と意識, 130-147 (1997)
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[Publications] 川口潤: "高倉公朋・宮本忠雄(監修)高橋徹・設楽信行・清水輝夫(編)「最新脳と神経科学シリーズ」第8巻「記憶とその障害の最前線」メディカルビュー社" 記憶の認知心理学, 1-11 (1998)