Research Abstract |
本研究は,今年度が2年目で昨年から継続して,ダウン症者とダウン症以外の精神遅滞者の運動機能と聴性脳幹誘発反応のデータ収集を各年代ごとに行った。特に,昨年,十分ではなかった20歳代,30歳代,40歳代のグループを中心に測定を実施した。 今年度,協力が得られたのは,精神薄弱養護学校の中学部・高等部と高等養護学校および精神薄弱者施設成人棟に在籍・在園するダウン症者32名(男性19名,女性13名),ダウン症以外の精神遅滞者32名(男性16名,女性13名〉の計64名である。しかしながら,40歳代以上のダウン症者の数が少なく,対象者として協力を得ることが困難であったことから,3年目もこのグループの測定が必要である。 2年目の研究成果: (1)心理面;収集した基礎的運動機能のデータを分析してみると,ダウン症者は,加齢とともに,各機能の平均得点が低くなることが観察された。とりわけ,40歳代にあっては,10歳代から30歳代に比較して著しく低下していることが認められた。一方,対照群である精神遅滞者では,10歳代から40歳代の間において,加齢とともに得点の低くなる傾向がみられるが大きな差異は認めらなかった。つまり,ダウン症者は,40歳代に入ると筋力(握力,背筋力)の衰えが激しく,それに伴い持久力(タッピング)や手指の協応性(パチンコ玉つまみ,全身反応)の機能の衰えが想定される。 (2)生理面;聴性脳幹反応の結果では,全般的にいって,10歳代で明瞭に認められた再現性が,加齢に従い消失していく傾向が認められた。再現性が確認されたダウン症者では,若年者はV波潜時の短縮傾向が,加齢に伴いV波潜時の延長傾向がみられた。 このような,基礎的運動機能にみられる特性を考慮して,ダウン症者の機能を高める指導が今後の大きな課題であろう。
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