Research Abstract |
本研究は,今年度が3年目であるが,昨年から引き続き,ダウン症者及び知的障害者において,年代別グループで対象者が十分に得られていない40-50歳代と20歳代の測定を中心に実施した。とりわけ,ダウン症者では,40歳代以上になると施設によっては在籍していないことも多く,また,在籍していても寝たきりであったり,あるいは,老化とともに他の病気を併発していたりで,協力を得ることが大変困難であった。従って,40-50歳代は一括して処理した。その中で,両グループで23名の協力を得ることができた。今年度は,40-50歳代の測定結果をまとめた。 (1) 心理面の結果 1) 両グループにおける各項目の結果をみると,ダウン症者群では,握力,背筋力,パチンコ玉つまみ,タッピング,全身反応のいずれにおいても成績は低く,10歳代から30歳代までの下降より著しい傾向が見られる。一方,知的障害者群においても,20歳代・30歳代より低くなるが,その傾向はダウン症者群ほど急激ではない。 2) また,右側面立位姿勢の2次元解析装置(日本事務光機製)のスティックピクチャーによる分析において,ダウン症者の姿勢は,知的障害者のそれと比べて異なる様子がうかがえた。 (2) 生理面の結果 1) ダウン症者群において,聴性脳幹反応のIII波とV波潜時およびI-V波頂点間潜時が加齢に伴い遅延することが認められた。知的障害者群では,このような加齢変化は,いずれの指標においても認められなかった。 2) ダウン症者群は,知的障害者群と比較して,10歳代ではV波潜時は短い傾向にあるが,加齢に従って逆転し,40-50歳代では延長する傾向が認められた。
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