Research Abstract |
大卒就職者の職場適応に関するデータを収集するために,大学卒業後2年目の男女15人に対して,質問紙と面接による調査を行った。質問紙は,郵送法により,卒業後の進路と職場の状況,職務満足,大学生活と大学時代および卒業後1年目の職業探索行動または職場適応に関する回想,ライフ・プロジェクトの測定を,自由記述を中心に行なった。また,縦断的データを重ねている時間的展望と自我同一性地位の測定,VP職業興味検査を実施した。面接調査は,予備調査をふまえて,職場適応の実際の行動,その動機と見通しについて明確にするための質問から構成された。また,質問紙調査の結果について,過去のデータを提示し,自己の変容の有無と原因について質問した。面接記録は筆記されると同時に,テープレコーダーで録音され,文章化された。 その結果,第1に,社会に出て将来展望は具体化・計画化・柔軟化するが,将来が見えているのではないこと,第2に,それは卒業時の職業目標との不一致の解消の仕方や結婚などによって将来に対する複数の選択肢のどれにするかが決まっていないなどのためであること,第3に,働くことや生活することに対する自信の高まりが将来展望を開く可能性があることが示唆された。 以上から,大卒就職者の初期適応の規定因モデルを作成するとともに,大学と職場におけるキャリア・カウンセリングの開発にかかわる提言をした。つまり,第1に,将来展望におけるいくつかの具体的な選択肢としてまとめあげ,どの選択肢のするのかという視点から検討すること,第2に,自分が当然だと考えていた職業観にゆさぶりをかけ,吟味していくこと,第3に,将来展望の具体化・長期化・柔軟化をいっそう高めるような働きかけをすることなどがあげられた。
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