1997 Fiscal Year Annual Research Report
災害後の罪悪感経験とストレス状態の健康心理学的研究
Project/Area Number |
08610154
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
島井 哲志 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (30136973)
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Keywords | 自然災害 / ストレス / 健康心理学 / 罪悪感 / 記憶 / 感情 / PTSD / 喪失 |
Research Abstract |
阪神大震災は、地震の規模だけでなく、多くの人たちを深刻な事件の当事者とした、大規模な都市型の災害であったことが待微であった。ここでは、親しい者との別離や、親しんでいたものの喪失、自分自身の怪我や恐怖体験によって起こる社会的感情のうち、罪悪感に注目して、それが、ストレス状態とどのように関連しているのかを分析し、身体的精神的な健康状態を向上させ、維持するにはどのようにすればよいのかを検討した。研究は、小中学生のストレスの実態調査と健康教育活動という部分と、主に、成人を対象として、罪悪感に的を絞った調査研究の2つの部分からなった。小中学生の研究からは、PTSDおよびそれに準ずる反応傾向は、徐々に低下していることが示されたが、上記の喪失などの強い体験のある者では、不安、うつなどの反応はそれほど低下しておらず、罪悪感を示している者は、それほど多数ではなかったが、うつ状態との関係が深いと考えられた。成人では、罪悪感をもっている者ほど、深刻なストレス反応を示すことが明らかになり、また、この傾向は、喪失経験による「非現実的な罪悪感」の場合に顕著であった。罪悪感をともなう自伝的記億を調査したところ、罪悪感の対象が、亡くなった人である場合には、罪悪感は無力感や絶望感に結びついており、家族などの場合には、より親密な社会的行動に結びつく傾向が見られた。これらのことから、対象とする事象によって、絶望感と結びつく非現実的な罪悪感と、より社会的な活動に結びつく罪悪感があり、身体的精神的な結果も異なることが明らかになった。これらの研究の一部は、国際健康心理学会議(1996)、WHOのワークショップ(1997)で報告した。
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[Publications] 島井哲志: "阪神大震災後の学校への心理社会的介入" ヘルス・サイコロジスト. 14. 2-3 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "ストレスとのつきあい方:中学校-ライフスキルの形成をめざして-" 教育相談研究. 87. 31-32 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "習慣の科学に基づいた教育-健康心理学からの提案-" 学校運営研究. 466. 9-9 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "ストレスとつきあう力を育てる" 児童心理. 680. 56-60 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "教職研修総合特集No127学校防災読本" 教育開発研究所, 271 (1996)
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[Publications] 島井哲志: "子どものためのストレスマネジメント教育 竹中晃二編,8章:健康教育からみたストレス・マネジメント教育(担当)" (株)北大路書房, 193 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "現代心理学シリーズ15 健康心理学 島井哲志 編" 株式会社 培風館, 183 (1997)
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[Publications] 島井哲志: "健康心理学辞典 日本健康心理学会 編" 株式会社 実務教育出版, 337 (1997)