1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 嘉倫 東北大学, 文学部, 助教授 (90196288)
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Keywords | 意図的社会変動 / 合理的選択理論 / ゲーム理論 / 社会計画 / 社会運動 |
Research Abstract |
今年度は、意図的社会変動のいくつかの事例をゲーム理論的モデルによって分析し、意図的社会変動の成功・失敗のメカニズムを探究した。分析結果として、次のことが明らかになった。意図的社会変動は変革主体の手段実施(制度の導入)によって作動するが、実施された手段(導入された制度)によっては意図的社会変動の社会的結果が複数生じる場合がある。これら複数の社会的結果の一方が成功で他方が失敗である場合、たとえ変革主体が合理的行為者であっても、意図的社会変動が失敗する可能性は常に存在する。なぜなら変革主体は意図的社会変動が失敗する可能性を事前に知っていても、成功するか失敗するかは事前に予測できないからである。ここに意図的社会変動が失敗する一つの理由がある。この知見をまとめたものを学位論文『意図的社会変動の合理的選択理論』として東北大学大学院文学研究科に提出し、平成9年2月に博士(文学)の学位を取得した。 さらに、上の分析を進めるにつれ、行為者間の信頼関係が意図的社会変動の結果に大きく影響することが明らかになってきた。しかもその関係は、行為者間で信頼関係が強ければ意図的社会変動は成功する、というような単純なものではない。そこで迂回的になるが、信頼そのものを分析するゲーム理論的モデルを構築し、平成8年11月の日本社会学大会(琉球大学)で「信頼と社会的ネットワーク」という題目で発表した。平成9年度はこのテーマをさらに深く掘り下げて、信頼と意図的社会変動の関係を分析する予定である。
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