1997 Fiscal Year Annual Research Report
震災時における自治体の防災対策の向上に関する調査研究
Project/Area Number |
08610180
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
野田 隆 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (50189403)
|
Keywords | 防災対策 / 災害情報システム / 地域防災計画 / 災害社会学 |
Research Abstract |
阪神・淡路大震災後、各自治体は情報伝達体制をめぐっていかなる向上策を用意したか、それは住民の需要に応えるものかという点を中心に分析した。その成果は大きく分けて、都道府県別防災準備度、メディア利用計画、生活情報の提供体制、災害弱者への情報伝達体制、住民の行動予想、地域情報ステーションの整備の方針、災害関連組織間関係の7項目に分類され、それぞれから実りある知見が得られた。本研究の核心部分に関する知見を示せば以下のようになる。 1.新規にメディアを活用して生活情報を伝達計画を有する自治体は例外といってよく、既存のメディアを既存の利用形態で伝達する計画が大半である。災害時の生活情報は、阪神大震災と同様に深刻な供給不足となるだろう。 2.住民の行動予想としてパニックや流言蜚語を懸念している自治体は都市部になるほど見られ、同時に生活情報を詳細に伝える計画を有している。また、住民の情報照会行動に対応する計画をもつ自治体も少なく、災害弱者に対する情報伝達は社会福祉協議会まかせであり、全体として、住民から行政へ向かう行動に対応できていないことが実証された。 3.「地域情報ステーション」を設置済みとするのは2.5%に過ぎず、それも現有設備で代替する方針が大半である。 4.一方、住民に情報連絡係を担当させる計画を用意している自治体は5割強に達し、災害時に、行政情報を住民に伝えるパイプ役としての期待が高い。しかし、そのための訓練はあまり実施されていない。 結論として、阪神大震災以降、その教訓を生かして向上策が進んだ自治体は例外に属し、全国的にはほとんど見直しが進んでいないことが明らかとなった。
|