1996 Fiscal Year Annual Research Report
国民国家の形成と「都市化」の関係についての歴史社会学的研究
Project/Area Number |
08610196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 弘夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60156875)
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Keywords | 都市化 / 国民国家 / 権力 |
Research Abstract |
近代国家は国民国家としてのさまざまな伝統をもっている。この点から、近代国家はそれ以前の伝統を残しているものと考えられてきた。その際、産業化にともなう都市化は、伝統的な社会を切り崩すと考えられてきた。しかし事態は逆であった。今日、国民的伝統といわれる多くのものが、産業化にともなう農民の「都市民」化のなかで形成されている。この意味で、イギリスの経済史家E.J.ホブズボ-ムの主張するように、われわれが伝統だと思っている多くのものが、実は近代になって形成されたものであるという命題は大きな説明力をもつものである。ボブズボ-ムのいう「創られた伝統」の概念は、とかく都市化を農民の労働者化としてとらえ、国民国家よりも社会主義化としてとらえていた従来の研究に、(ホブズボ-ム自身がこうした議論の代表者と考えられてきただけに)、一石を投じるものであった。日本においても、今日われわれが天皇制や神社参拝を含めて伝統文化されているものが、少なくとも今の形態をとるようになったは明治期に入ってからである。さらに人々の生活様式が今の形態をとるにいたるのは、戦後の経済の高度成長にともなう「都市化」の過程においてである。本研究は日本とイギリス東北部を舞台として、この命題を論証と実証を試みている。
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