1996 Fiscal Year Annual Research Report
企業社会の競争構造と労働組合の対応-電機産業を事例として-
Project/Area Number |
08610208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
大梶 俊夫 創価大学, 文学部, 助教授 (30160427)
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Keywords | 労働組合 / 競争規制 / 能力主義 |
Research Abstract |
今年度の研究成果は,文献およびヒヤリング調査によるものが中心である。電機産業の各企業別労働組合(東芝,日立,三菱,神鋼電機など)の運動史資料,電機産業労働組合の産別組織である電機連合(旧電機労連)の運動史を主な資料として,競争規制に対するこれまでの労働組合の取り組みのあり方について,文献調査をおこなった。また同時に各組織へのヒヤリング調査をおこない,企業内外で強まりつつある能力主義・成果主義に基づく差別化傾向に対する労働組合としての評価と対応について研究をおこなった。 以下,今年度の研究調査による暫定的な成果の幾つかについて簡単に述べる。職場内の昇進・昇給を中心とする個人間競争に対する労働組合の取り組みについては,昇進・昇給の制度の改定については組合も関与するが,制度の運用による個人の人事評価や査定についてはほとんど組合は関与しないというのが現状のようである。稀に組合員から昇進・昇給についての苦情が組合に対して寄せられた場合に対応するだけである。職場の競争規制という視点から見るとき,このような日本の企業別労働組合の現状は大きな課題を抱えているといえる。また現在強まりつつある能力主義・成果主義的傾向については,組合幹部のヒヤリングによれば,組合員の意見は若年者を除けば,一般には否定的であり,生活保証を第一に考える意見が多いとのことであった。さらに企業間競争に対する組合の対応では,現在進行中の97年春闘にも見られるように,業績に基づく企業間格差の拡大傾向が見られ,産別組織の取り組みは後退している。一般組合員がこうした現状をどう見ているのかを,アンケート調査によって明らかにすることが97年の研究課題である。
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