1997 Fiscal Year Annual Research Report
企業社会の競争構造と労働組合の対応-電機産業を事例として-
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08610208
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
大梶 俊夫 創価大学, 文学部, 教授 (30160427)
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Keywords | 労働組合 / 競争 / 能力主義 / 電機産業 |
Research Abstract |
今、メガ・コンペティションの巨大な潮流が日本の各企業に襲いかかってきている。アメリカ的な市場万能主義がグローバル・スタンダードとなり、自由競争のみが人類に進歩と発展をもたらすような首長が声高に叫ばれている。こうしたなかで、従来の日本型企業社会はその姿を大きく変えつつある。「日本的経営」の柱とされた終身雇用、年功制企業別組合のうち、まず、年功賃金・年功昇進が崩壊しつつある。年俸性が普及し、能力主義・成果主義的人事管理が強化され、賃金システムから年功的要素を無くす、あるいは少なくする方向での改革が進んでいる。企業内でも職務によって賃金体系を変える企業も出ている。同期入社が同じテンポで昇給・昇進していったのは、今や昔の話である。また終身雇用と呼ばれる長期雇用慣行も、不況に対応したリストラや労働市場の流動化のなかで、人々の意識のなかから消え去りつつある。都市銀行でさえ倒産する時代であれば、企業が雇用を長期にわたって保証できる状況ではなく、労働者自身が絶えざる能力向上の努力によって、雇用を勝ち取っていかざるをえないと考えるのも当然である。労使双方の意識のなかで終身雇用は過去のものになりつつある。唯一残っているのが企業別組合である。春闘の形骸化、業界横並び意識の喪失によって、一面では組合が単産の枠内で同一歩調で歩むのでなく、企業単位に意思決定し、行動する側面は強まっている。外見的には企業別組合は強化されているともいえよう。だが、ベースアップが千円あるいは2千円という賃上げ状況では、労働者の意識も組合へ結集するよりは、個人の査定をいかに高め、個人として昇給を獲得する方向に向かわざるを得ない。組合機能は本質的には消失しつつあるといえよう。強化された競争構造の前で、労働組合はたちすくんでいるといえる。
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