1996 Fiscal Year Annual Research Report
教科書における科学教材の研究-日本の公教育成立・形成期に限定して-
Project/Area Number |
08610233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
須田 勝彦 北海道大学, 教育学部, 教授 (60091469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 政美 北海道大学, 教育学部, 助手 (70221827)
大野 栄三 北海道大学, 教育学部, 助教授 (60271615)
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Keywords | 教科書 / 科学教育 / 科学教材 / 算術 / 物理 / 自然観 / 読本 / 公教育 |
Research Abstract |
本研究の課題である公教育成立期の教科書における科学教材の研究の中で、平成8年度は主として明治19年以前、即ち検定期以前の教科書の検討がなされた。まず、共通の検討事項であるこの時期の教授学理論の到達水準について確認の後、物理、算術及び読本の教科書に関する資料の収集、整理が進められ、分析がなされた。 検定期以前の物理教科書では、重要な天然力として「重力」「凝集力」「化学親和力」という概念が用いられ、また物性として物質の慣性、不加入性等が挙げられている。このような概念系は従来、スコラ学的であると批判されていたが、それらの説明が持つリアリティは自然理解に役立つ側面も有している。検定期から国定期へと移るに従い、物理教科書の内容は劇的に現代のそれへと近づいて行く。力は運動変化の原因として登場し、物理理論に対して外在的なものとなる。そこには検定期以前の教科書に見られるリアリティはむしろ乏しくなっている。次年度はこれらの変遷と現代物理学の成果を踏まえた上で、これからの理科教育の内容構成に関する提言を見いだして行く予定である。 算術では、塚本明毅『筆算訓蒙』(明治2年)、中絛澄清『算学教授書』(明治9年)、永峰秀樹『筆算教授書』(明治10年)などにつき、(1)数とは何か、量との関係をどのように把握しているか(2)演算の基本法則をどのように扱っているか、(3)分数及び比をどのように把握しているかの3点に焦点をあてて検討した。これらの諸点は算術教育に特有というより、全ての数学教育において中心問題であり、次年度は検定期も含めた実践的諸遺産の整理を試みたい。 読本においては今日の国語科との教科の目的論の相違を勘案しながら、主に師範学校編『小学読本』の究理、博物教材の検討を進めている。
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