1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610235
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
古野 博明 北海道教育大学, 教育学部・旭川校, 教授 (60107232)
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Keywords | 教育基本法 / 田中耕太郎 / 南原繁 / 田中二郎 / 教育勅語の取扱い / 教育を受ける権利規定批判 |
Research Abstract |
本研究にかかる科研費補助金によって田中耕太郎教育関係文書、辻田力文書、公文類集・公文雑纂中の教育関係文書、教刷委・教刷審会議録(第10巻まで)等を蒐集・購入し、その他若干の資料については研究代表者が勤務する大学の経常研究費を用いてこれを補った。研究代表者はこれら諸文書中に含まれた教育基本法関係の資料群によって、教育基本法成立過程全体の実証的研究に新たな段階が築かれたと考えている。すなわち、 通説がもっぱら当時の田中(耕)文相に焦点を合わせて教育基本法の成立を説いてきたことに対し、第一に、これに加えて教刷委の南原繁副委員長(後に委員長)の存在が重要であり、彼の折々の発言は立法思想的には、教育基本法立案過程に関与したCI&E教育課の発想に相似していること、第二に、教育基本法という立法の形態・構想の観点に注目すると、田中(耕)文相の意を体して文部省内の立案実務を指導した田中二郎の位置が従来考えられてきた以上にきわめて大きいこと、この二点が新たに判明した。教育基本法成立過程については、田中(耕)、南原、田中(二)のそれぞれが占めた位置、果たした役割を正確に見据えながら議論される必要があるという点を重視しなければならない。内容的には教育基本法成立の意義については、通説がいう教育勅語からの教育根本方法転換説に加えて、憲法改正草案24条(教育を受ける権利規定)批判の文脈で教育基本法の制定方針が誕生することも目を向ける必要があるだろう。 なお、研究成果報告書の作成に当たっては、本研究で蒐集した資料群のうち、従来未発見であった田中二郎教育関係文書を広く内外の研究者に公開しその利用に供することが急務と考えて、同文書を整理しその目録を作成・刊行することに主眼をおいた。
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