1998 Fiscal Year Annual Research Report
英国メカニックス・インスティチュートにおける親睦的活動の教育的意義に関する研究
Project/Area Number |
08610252
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
加藤 鉦治 名古屋大学, 教育学部, 教授 (00109232)
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Keywords | メカニックス・インスティチュート / ベンジャミン・へーウッド / 娯楽 / 親睦事業 |
Research Abstract |
本年度は,とくに,個別事例としてとりあげたマンチェスター・メカニックス・インスティチューション(以下MIと略す)において,親睦的事業を先導した代表的人物であるベンジャミン・ヘーウッドの生涯と実践について,考察した。とりわけ同MIの『年報』ならびに『ヘーウッド講演集』の分析を通して,以下の諸点を明らかにした。 1. ヘーウッドは教育についてまとまった論著をものしてはいないけれども,各種の教育機関や協会に関与したし,種々の機会に演説をしたなかで,とりわけ勤労者階級の成人の教育学習に対する所信を披瀝している。かれの教育振興活動は,友愛協会・倹約協会の組織化,公衆浴場の建設,公園の設置などに尽力したように,社会改良活動の一環としての性格が強かった。 2. マンチェスターにおけるかれの立場は変わることがなかったけれども,かれの講演内容には論点の顕暑な変化が見られる。当初は,科学がもたらした驚異的な成果,科学学習の重要性を力説していたが,1830年代から,教育学習面よりも親睦事業の開催を重視し推奨している。「気晴らしや娯楽」と「知識の伝授」とを結びつけることの重要性を説いた。 3. マンチェスターMIは,ヘーウッドの提言を容れて,たくみに経営方針を転換した。「教育的傾向をおびた娯楽のための便宜」(博覧会,エクスカーショシ,音楽会,親睦の集いなど)を適時に企画し,これを教育プログラムのなかに積極的に位置づけたのである。 4. このような経営転極は,MI自身にとって大きな経営成果をもたらしたが,社会的・教育的に大きな意義を有した。これらの親睦事業では,同じタイム・テーブルに従って行動するうちに,入々は一日に何度も同じ顔に遭遇し親密さを増すことになることから,社会の一休性,均質性を育むという社会的意義である。
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