1997 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本における学習論と学習方法に関する文化論的研究
Project/Area Number |
08610255
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 雅史 京都大学, 教育学部, 教授 (70221413)
|
Keywords | 学習文化 / 近世教育 / 貝原益軒 / 手習い / 素読 / 身体論 / 儒学学習 / 儒教思想 |
Research Abstract |
本研究は、江戸時代に蓄積された教育や学習の方法や文化の豊かさを明らかにすること、それによって現代の日本の教育や学習への独自の視点を得ようとするものである。 今年度はまず貝原益軒の学習論を、その著『和俗童子訓』にもとずいて分析し、その成果を「教育システムのなかの身体:貝原益軒における学習と身体」という論文にまとめた。『和俗童子訓』は当時の一般的な学習のあり方を言語化したものと考えられ、近世の学習観をさぐる上に有効である。益軒の思想では朱子学とは逆に、身体性の契機が浮上していること、益軒が重視する「予めする」教育というのが人間形成における模倣と習熟を重視するものであること、その学習の原則は「素読」や「手習い」の学習にも一貫していること、などを論じ、学習における身体性の浮上の歴史的意義を考察した。 12月にはシンガポール国立大学主催の国際シンポジウム“Confucian Currents in East Asia,17 to 19 Centuries"に招かれ、「日本近世儒学における学習論と「知」の位相」と題する報告を行い、日本儒学における学習の特質と儒学諸派における学習法の違いが「知」の位相を規定していることを述べ、それを論文化して提供した。98年3月にはオランダのライデン大学主催の国際シンポジウムに招かれ、「貝原益軒の文化史上の位置」と題する報告を行い、その論文化を進めている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 辻本雅史: "教育システムのなかの身体-貝原益軒における学習と身体" 江戸の思想(ぺりかん社). 第6号. 28-47 (1997)
-
[Publications] 辻本雅史: "日本近世儒学における学習論と「知」の位相" 国際シンポジウム“Coxfucian Currents in Japan and East Asia"報告集. 1-7 (1997)
-
[Publications] 辻本雅史: "哲学(思想)としての儒教-日本近世儒学研究素描-" 真宗総合研究所研究紀要(大谷大学). 14. 37-55 (1997)