1996 Fiscal Year Annual Research Report
消費社会における教師役割-教員文化の機能に注目して-
Project/Area Number |
08610271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
油布 佐和子 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (80183987)
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Keywords | 消費社会 / エスノグラフィー / 教師役割 / 組織化 |
Research Abstract |
本研究は、80年代に顕著になった「豊かな社会」における新たな学校・教師役割を探ることを目的としている。 高度消費社会の中で現代学校は規範維持型(教師は、豊かな社会の中で、変わる児童・生徒に対し、古くからの教員エ-トスをもって生徒に個別的・包括的に対応し、彼らに規範を遵守させることに躍起なる。その結果、教師の多忙化を招いている)と儀礼型(教師も生徒も、学校の価値を従来のように意義あるものとみなしておらず、ただ形式的・儀礼的にそれぞれの役割演技を行っている)に分極化しているが、そのいずれも新しい社会状況に則した学校・教師役割への革新とは無関係である。新しい社会状況にみあった役割革新・創造を阻害している要因と、今後の展望が検討すべき問題の中心であった。 本年度は、第一の課題として、エスノグラフィーの手法を用いて、学校の内部過程、とりわけ教師の日常の教育行為を観察・記録し、現在の学校での重層的・多面的な教師の役割とその文化を実態レベルで把握することに努めた。これは、何よりもシステムを維持しようとする強固な教師文化の存在を解明しようと意図したためである。ただし、エスノグラフィーは現在継続中であり、分析は来年度に行うことになる。 一方、第二の課題として、今後の学校・教師役割を展望するために、わが国の戦後の学校及び教師の役割の変容について、時系列的に把握することに努めた。戦後の新聞、雑誌記事等の収集・検討から明らかになったことは、以下の点であるえ。第一に、1960年代を境にして学校と社会の境界が明確になり、教師や生徒が学校の内部に囲いこまれるような状況が出現したことである。第二に、学校と社会の境界が強く意識されるようになった後には、学校の内部で、学校・教師役割(管理・監督、責任の)明確化が進行したという点である。すなわち、現代の学校は、外部の社会状況とひとまず区別されて、自己運動としての組織化の進展がみられた。 次年度は、上記の水平的な考察(第一の課題)と垂直的な考察(第二の課題)を総合して、消費社会における学校・教師の役割を考察する。
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