1996 Fiscal Year Annual Research Report
初等学校における授業実践の発展に関する実証的・国際比較史的研究
Project/Area Number |
08610275
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
豊田 ひさき 大阪市立大学, 文学部, 教授 (70079127)
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Keywords | 初等学校教師 / 授業法 / 教師の力量形成 / 実践記録 |
Research Abstract |
今年度の研究によって、ドイツ、イギリス、わが国に関して、次のような新たな知見が得られた。 1.ドイツに関しては、(1)ディンターと同時代のオ-フェルヴェルクが19世紀初頭の北西部ドイツの詳細な初等学校視察記を残しており、その記録がマイクロ化されていることがわかった。(2)18世紀末の代表的な初等教育改革者であるロヒョウの弟子ブルンスの実践記録が1996年に出版され、目下分析中である。 2.イギリスに関しては、1840年代になると、庶民の子弟がランカスター法が支配する初等学校でモニターになり、彼らが13歳程で選抜され、以降5年間の教師見習い期間を経て、大多数が初等学校の教師になっていく。この見習い期間の終了時に国の奨学金を得て1年制の教師養成短期大学に進学するのはごく少数で彼らが初等学校教師の指導的エリートになっていく、だが依然として一斉画一授業であるというプロセスが明らかになった。 3.わが国に関しては、明治10年代末までの近代的な授業法の発展・定着過程で、一人ひとりの子どもの理解度に合わせて授業を展開していこうとする実践がいくつかあることが発見できた。まだ十分に整備され切っていない師範学校以外のどこで、彼らがこのような力量を身につけていったのか、さらに検討を進めたい。 4.本研究の中間報告としては、わが国の教師の場合とイギリスの教師を比較した場合、当時のわが国の初等学校教師はまだ多くが士族の子弟であり、江戸時代からの基礎教養がバックにあったが、イギリスのエリート教師といえどもそれに相当する基礎教養が無かったことが、1つの大きな要因になっているのではないか、という仮説を導きだすことができたことである。来年度はこの点を中心にさらに研究を深めたい。
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