1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610283
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Research Institution | Sophia Univercity |
Principal Investigator |
湯川 嘉津美 上智大学, 文学部, 助教授 (30156814)
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Keywords | 幼稚園論 / 倉橋惣三 / フレーベル / 幼児教育改革 |
Research Abstract |
本年度は、大正期から戦後にいたる幼稚園論・幼児教育制度論を取り上げ、検討を行った。とりわけ、この時期の幼稚園改革を推進した倉橋惣三については、その「国民幼稚園」論に焦点をあてて研究を進めた。 まず、倉橋の保育論の背景にいかなるフレーベル理解、幼稚園教育理解があったのかを明らかにするために、彼のフレーベル研究の検討を行い、それが倉橋の保育論の展開にいかなる意味を有していたのか、その関連性への考察を行った(「倉橋惣三のフレーベル理解-フレーベル研究から国民幼稚園論へ-」)。その結果、1,倉橋はフレーベルの根本精神に学びながら、幼児の生活を体位とする保育論(誘導保育論)を構築していったこと、2,戦時下における倉橋の国家主義的幼稚園論(国民幼稚園論)の背景に、シュプランガーのフレーベル研究の影響が認められること、などが明らかになった。 さらに、倉橋における戦中・戦後の幼稚園制度論の展開とその性格について明らかにするために、倉橋の「国民幼稚園」論の検討を当時の教育改革の動きを視野に入れながら行った(「倉橋惣三における国民幼稚園論の展開」〔教育史学会にて報告〕)。その結果、1,倉橋の国民幼稚園論は従来の幼稚園を国民教育を担う「国民幼稚園」として再編するとともに、教育改革の動きに乗じて保育界の年来の課題であった幼稚園の制度的確立(幼稚園教育義務制と幼保一元化)とその普及を図ろうとするものであったこと、2,戦後の倉橋の幼児教育改革の主張は、そうした戦時下の改革構想を引き継ぐものであり、その意味では、倉橋にとって戦後の幼児教育制度改革は新たな理念のもとでの戦時下教育改革構想の実現であったこと、などが明らかになった。
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Research Products
(1 results)