1996 Fiscal Year Annual Research Report
病弱児の心理的援助にかかわる授業の研究-「養護・訓練」の領域において-
Project/Area Number |
08610308
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
矢吹 和美 国立特殊教育総合研究所, 病弱教育研究部, 室長 (70099943)
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Keywords | 病弱児 / 心理的経験 / 行動化 / 身体化 / 心理化 |
Research Abstract |
病弱養護学校(2校)において、心理的援助を必要としていると思われる児童生徒を8名選出した。 教師にとらえられている問題行動は、次のようなものであった。(1)衝動的な反応をする。他者への攻撃的な態度(言葉や現実的な行為)をあらわす。(2)自分にとって不都合な事態が予想されると身体の具合が悪くなる。(3)授業において無気力な態度が目立つ。 児童生徒に課した心理テスト(HTP)の結果は、以下のような特徴を示していた。(1)感情(怒り、悲しみ、寂しさ等)の表現に乏しい(感情を意識することが少ない)。(2)守られている感覚に欠ける。(3)身体感覚の確かさに欠ける。(4)他者や社会と結びついている感じが少ない。そのことが孤立感として自覚されていることはあまりない。 彼らの問題は、いずれも心理的なこととして表現されずに、行動化あるいは身体化されてあらわされていることが明らかにされた。彼らが、自分の心理的経験を意識することは、大変な苦痛を伴う。それゆえそれを避けるために行動化や身体化しているわけであるから、この状態にある者への心理的援助に際して、急激なあるいは短絡的な直面化は避けられなければならない。養護・訓練という授業の枠は、直面化への守りと変容の器としての機能を持っている。その中で彼らが、自身の心理的経験を表現しているであろう教材や課題に出会うということは、安全に直面化が出来る可能性がある。8名の児童生徒の心理的経験と重なるであろう教材を探す作業がなされ、いくつかの絵本と課題のテーマが検討された。
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