1996 Fiscal Year Annual Research Report
[病棟]のエスノグラフィー〜入院者の疾病・障害観とその形成過程を中心に〜
Project/Area Number |
08610320
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
拓植 あづみ 北海道医療大学, 基礎教育部・文化人類学, 講師 (90179987)
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Keywords | 医療人類学 / 病棟 / 疾病観 / 障害観 / 参与観察 / 聞き取り調査 / 患者 / 医療者 |
Research Abstract |
平成8年度はまず関連研究の文献検索を行った。その結果、医療人類学もしくは医療社会学、精神医学と文化等の研究領域においては、illnessとdiseaseの区別に関する論考、ある症状が医療化(medicalization)する過程の研究および特定の文化における「病気」の認識に関する研究が比較的多く、個々人の「病気」や「障害」に関する認識の形成が病院や医療者との関係もしくは個人のライフヒストリーと如何に関係しているかという研究は現在までには見つかっていない。引き続き次年度も検索領域の幅を広げ、文献研究を行う。 フィールド・ワークは1996年3月より、脳神経外科のP病院において1)月2〜3回の割合で機能回復のための外来レクリェーション活動の参与観察および2)病棟でのナ-スステーションの参与観察を行った。さらに3)看護婦長と担当看護婦との相談の上で入院者との自由会話による聞き取りを行った。また、消化器科のQ病院においては1)病棟でのナ-スステーションの参与観察、2)「入院者」への医師から病状や治療方針の説明を行う「面談」の観察を行った。 これまでの調査からは、「病棟」での、a)入院者(患者)と看護婦と医師という役割の違いによる過ごし方(生活)とそこでの出来事の判断/評価の違い、b)病棟での役割だけではなく、それぞれの個人が有する病歴や現在の社会的状況、職業経験(医療者の経験があるか)、家族との関係などによる「病棟」での過ごし方の違い、c)個人の性格、人生経験などによる「病棟」生活や病状についての意識と行動の違いが把握されつつある。9年度にはP・Q両病院において、「入院者」への個別の聞き取りを、できるかぎり経時的に複数回行うことによって、その疾病・障害観とそれが形成される過程の分析を行う予定である。
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