1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610333
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水野 直樹 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (40181903)
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Keywords | 植民地 / 朝鮮 / 台湾 / 治安維持法 / 治安政策 / 刑事政策 |
Research Abstract |
1 植民地、特に朝鮮における治安維持法の運用の実態を解明するための資料収集を継続して行なった。今年度は、特に朝鮮総督府の機関紙的な役割を果たした『京城日報』からの記事検索・抽出の作業に重点を置いて資料収集を行なう計画であったが、所属機関における同紙マイクロフィルムの収集作業が遅れたため、該当期間のすべてについて検索することはできなかった。 2 3年間にわたる研究のまとめをするため、収集した資料の分析に力を注いた。その結果、従来の研究では見落とされていた重要な事実を明らかにすることができた。例えば、次のような事実である。 (1) 治安維持法によって死刑判決を受けた例はないとされてきたが、「第5次間島共産党事件」と呼ばれる治安維持法違反事件では、1名の被告に対し治安維持法違反のみで死刑が言渡され、刑が執行された。 (2) 治安維持法違反事件関係者に対する予防拘禁制度は、日本内地より朝鮮の方が早く実施計画が立てられ予算も決っていたが、法令の整備に時間がかかったため、内地とほぼ同時期の実施となった。 以上のような事実は、植民地における治安維持法体制が独自の論理をもって構築・展開されていったことを示している。このような観点から、植民地治安維持法体制の全体像を解明するための成果報告書を作成した。なお、近い将来、成果報告書に追加・修正を加えて、単行本の形で刊行する予定である。
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