1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
高木 俊輔 国文学研究資料館, 史料館, 教授 (90022186)
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Keywords | 農民日記 / 民衆生活 / 村落 / 生活史 / 全文テキスト |
Research Abstract |
幕末維新期の農民日記のうちで最も注目されているものの一つで、しかも最近ようやく公開されるところとなった「年内諸事目録帳」(いわゆる「大黒屋日記」)の解説と採集を、予定通りに進めてきた。「年内諸事日記帳」は、作家島崎藤村が「大黒屋日記抄」を作成し、それをもとにして長編小説『夜明け前』を書き上げたことで有名であるが、未だこの原文を全文解読した人はいない。なかなか公開されなかったことに加えて、日記独特の解読困難な部分が少なくないこと、残存分だけでも41年分31冊におよぶ厖大な量であり、所蔵されている所が長野県木曽郡山口村馬篭の藤村記念館という交通の不便な所にある、という条件も全文解読を遅らせてきたのである。幸い、東京においてコピーのコピーを借覧して解読を進めることが出来るようになったので、日常的に借覧コピーの解読にあたってきた。しかしながら、コピーのコピーであるために不鮮明な部分があり、加えてコピー自体に落丁部分があるので、夏期いはいるまでは出来るだけ解読を進め、その上で7月下旬から8月中旬にかけて集中的に日記が所蔵されている長野県馬篭の藤村記念館に出かけた。ここでは、今まで全く未公開であった日記最後の部分である明治元、明治2、明治3年の3冊の全文解読・筆記を果たし、さらにそれまで解読困難であった部分について、原日記を閲覧させてもらい解読・筆記にあたり、またコピーの落丁部分、不鮮明部分の閲覧・解読・筆記を進めてきた。このようにして解読したものは、日記全体のほぼ三分の二の分量に達した。これを購入したパソコンで入力モデルの検討を行った上で、全文入力方を外注し、すでにその納品はなされている。一方、現在は残りの部分の解読・筆記を積み重ねつつあり、「年内諸事日記帳」全文収集の見通しがついたところである。
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