1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小松 香織 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (10272121)
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Keywords | 海運 / 海軍 / オスマン帝国 / 資本主義 / 近代化 / 汽船 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代オスマン海運の形成過程を分析することにより、オスマン帝国の資本主義的世界経済への従属的包摂にともなういくつかの問題点を明らかにすることである。特に本年度は(1)海軍の商業海運への関与、(2)海運の自立を阻んだ要因、すなわち国際的には列強の経済的進出、そして国内的にはムスリム・トルコ系エリートと非ムスリム系の経済官僚・政治家、資本家との対立に重点を置き、現地調査を行った。 (1)については、これまで収集したオスマン海軍関係史料を補うため、トルコ共和国海軍公文書館で新たに公開された文書を中心にデータ・ベース化した。 (2)に関しては、まず外国企業との競合問題で特に黒海沿岸の貿易と海運について19世紀初頭から20世紀初頭にかけての約1世紀間にわたって検討することとし、トルコ側の年代記、公文書、同時代の定期刊行物等の史料収集を行った。一方西欧側の史料についてはロンドンで調査を行い、国立公文書館所蔵の当該地域・年代の「英国領事報告」および英国海軍博物館所蔵の文献を収集し、データ・ベース化した。また、国内の対立に関しては、オスマン帝国議会議事録を検索し、海運の民営化をめぐる賛成派と反対派の論争を拾い上げ、その争点、政治、経済、社会的意味あいについて分析を行った。 上記の研究は現在史料のデータ・ベース化と先行研究書等の参考文献の比較検討の段階にあり、今年度においてはその成果をまとめて発表するには至っていない。ただし、一部海軍の問題に関連して、"Financial Problems of the Ottoman Navy during the reign of abdulhamid II"と題する論文をまとめ、近く複数のオスマン帝国海事史研究者との共著の形でケンブリッジ大学で出版する予定である(本の題名は未定)。
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