1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610369
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
水羽 信男 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50229712)
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Keywords | 中国近代知識人 / 中国国民党 / 国民政府 / 章乃器 / 戦時動員 / 中間団体 / 国民統合 / リベラリスト |
Research Abstract |
中国近代知識人の総体的なイメージを構築することを目指した本研究は,国民政府の成立(1928年)から中華人民共和国の樹立(1949年)にいたる時期の中国国民党(国民党)と知識人のの関係を明らかにするため,(1)中国知識人相互の1920〜40年代における政治傾向の相違点と共通点を考察する,(2)彼・彼女らの国家構想・建国構想を国民党の諸政策との関連において考察するという計画にしたがって研究をすすめてきた。 研究のとりまとめにあたった本年度は,『良友画報』などの基礎史料を充実するとともに,章乃器に焦点を絞って分析をすすめた。「学徒」からの叩き上げの銀行家(浙江省実業銀行副頭取,1936年国民党に迫られ辞職)だった章乃器は,可能な限り平和的な手段での変革を志向し,容共的で米ソ両国とも等距離外交を目指した,個人主義的傾向の強い中間派の一人であった。 こうした立場にたつ章は,初年度に研究を進めた羅隆基や施復亮とともに,1928〜49年の言論界を一定程度リ-ドしたといえるが,本年度は具体的には,日中全面戦争期(1937〜45年)における章乃器の民衆動員論ととりあげ,実際の戦時動員に従事した彼が,中間団体を排除し国家と個人とを直接的に結びつけた集権的な権力を樹立しようとしたことを明らかにした。同時に章乃器にとては,戦時下における集権的な国家権力は,中国の民主的改革・国民統合を進めるものと期待されたことも指摘し,リベラシストとしての立場を堅持したことについて論証した。
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Research Products
(1 results)