1996 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム前近代法における民族意識の研究-『国朝刑律』を中心に-
Project/Area Number |
08610372
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
片倉 穣 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (50085180)
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Keywords | 民族意識 / ベトナム法 / アジアの法 / 歴史と法 / ベトナム民族意識 |
Research Abstract |
ベトナム前近代法における民族意識の研究を終えるに当たり、この1年間に得られた成果を報告すると、次の通りである。 1.ベトナムと中国の史料により、ベトナム法の歴史的発展過程において、民族意識が強く表われていることを具体的に考察し、ベトナム民族史の新しい側面を浮き彫りにすることができた。 2.ベトナム前近代の諸史料にみられる法制用語を検出し、それぞれの意味内容を検討した。すでに作成済みの『国朝刑律(黎朝刑律)』の語彙集を基礎に、東南アジアと中国の諸法との比較的考察をすすめ、その独自の意味や用法を検討した。 3.『国朝刑律』の構成上の特徴を吟味した結果、そのなかに北国の中国を強く意識した民族的性格が色濃く反映していることを検証した。 4.『国朝刑律』の条文と内容を詳細に分析し、中国法文化圏のなかでベトナム法がもっとも民族意識の濃厚な法であったことを確認した。この法典には、外国・国境にかかわる条文が数多く収められており、ことのほか外国を強く意識していたことが注目される。 5.『国朝刑律』は、中国法典の条文を機械的に継受しなかったが、そこにも、ベトナム的特色や民族意識を充分に見出すことができる。 以上、従来の研究では、ほとんど取り上げられなかったベトナム法における民族意識の問題に一定の成果をあげることができ、あわせて『国朝刑律』の索引原稿も、ほぼ完成の域に到達した。本課題の研究成果の概要は、別冊の報告書としてまとめたが、近い将来、単行書の形で公表したいと思っている。
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