1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610386
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉本 淑彦 静岡大学, 情報学部, 助教授 (30179163)
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Keywords | 帝国主義 / 植民地主義 |
Research Abstract |
1870年代から第一次世界大戦までの「帝国主義の時代」におけるフランス国民のアジア観の分析を中心に、それとアフリカ観との比較などもおこなった。 まず第一に明らかになったことは、大衆文学・「挿し絵入り」新聞雑誌・大衆向け記録映画・絵画などにおいて、アジアは(フランスの直接の植民地であったインドシナでさえも)アフリカ(とりわけ北アフリカ)と比べて題材にされることが少なかったことである。これは、民衆レベルのフランス帝国主義文化において、アフリカの位置と比べてアジアの占める位置が相対的に低かったことをものがたっているだろう。 第二は、上記のメディアにおいて、アフリカが経済的かつ社会帝国主義的進出の対象としてとらえられることが少なくなかった一方で、アジアはもっぱら伝統的なエグゾチスム(異国趣味)の文脈のなかで表象されることがもっぱらであったことである。このことも、19-20世紀フランス帝国主義文化の中におけるアジアの重要性の低さをものがたっているのかもしれない。 第三は、このようにアジアとアフリカとで表象の力点に差異があるにしても、現地女性はアフリカ黒人も日本女性もインドシナ女性もひとしく「petite」と描写されたことからもうかがえるように、アジア・アフリカの住民とその社会がフランスと比べて劣位にあるとみなされていたことにはかわりなかった、と言わなければならないだろう。
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