1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610393
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
古山 正人 國學院大學, 文学部, 教授 (20181472)
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Keywords | 古代ギリシア / シュムポシオン / ポリス / 部族制 / アリストテレス / エヴェルジェティズム |
Research Abstract |
「古代ギリシアのシュムポシオン研究」の研究課題の1つはシュムポシオン関連の図像資料のデータベース構築にあるが、コンピュータ操作習熟には今しばらくの時間を必要とする。 96年夏、ブリストルのシンポジウムに参加するために渡英した機会を利用して、文献収集を行った。これまで最も基本的な文献であったJosef Martin,Symposion:Die Geschichte einer literarischen Form,Paderborn,1931をはじめ貴重な著作・論文を集めることができた。今後はこれらの文献の内容の精査が課題となる。いずれにしても、現在のシュムポシオン研究の指導的研究者はオックスフォードのO.Murrayであり、マレーのシュムポシオン関連の論文は網羅的に集め、読了した。彼の研究はポリス共同体の形成を部族制的親族集団に求める従来の考え方の批判から始まった。つまりは、アリストテレスの『政治学』に定式化されたホモ・ポリティコス批判である。そして、彼は今日の歴史学の傾向で言えば、社会史・文化史の方向に大きく舵を取るのである。彼によると、社会とそれに付随する文化を形成するために一般的に用いられるのは古代にあっては農業余剰であり、その消費の機会である社交と共食、つまりは広義のシュムポシオンの在りようが社会と文化を特徴づける。このような観点から古代ギリシアの人間類型を俯瞰したのが、Forms of Sociality in J.-P.Vernant(ed.),The Greeks,Chicago & London,1995である。彼の方法を深めていくことが次年度の課題だ。この作業と並んで、アミアン大学のP.Schmitt-Pantelの大著 Lacite au banquet;1992で展開された、ポリスが中心となる共食制度(パンアテナイア祭のようなポリスの大祭における祝宴、あるいはプリュタネイオンにおける食事など)、エヴェルジェティズムとの関連などの観点も慎重に考察を進める必要がある。
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