1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610397
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 雅夫 早稲田大学, 文学部, 教授 (10120916)
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Keywords | ローマ / 奴隷 / 教育 / 教師 / 医師 / 捨て子 |
Research Abstract |
ローマ社会で自由人の精神に関わる教育の仕事に従事した教師と自由人の身体に関わる医療に従事した医師たちの多くが奴隷あるいは解放奴隷(元奴隷)であった。他の社会におけると同様に、彼らはローマ社会でもどうしても欠くわけにいかない重要な人々であったから、それなりに大事にはされていた。 教師と医師は、奴隷たちの国外追放の際にもあくまで例外扱いをされていたし、奴隷出身でありながらも、中には著名な学者や医師となった人々もいた。同じことは男性の場合ばかりでなく、女性の医療従事者の場合にも当てはまる。つまり、拙稿「ローマの女医・助産婦」でも検討したように、奴隷の女医も助産婦も間違いなく活躍していた。 スエトニウスが挙げている著名な教師・学者の多くが捨て子だったというように、多くの教師や医師は奴隷で、しかも捨て子の運命にあったらし。この問題のために、多くの碑文を検討してきて、多くの奴隷あるいは元奴隷の医師や女医がいることを確認してきた。問題は、社会の最下層に位置する奴隷だった彼らが、どうしてそのような高度の教養なり、専門知識を身につけたのかである。当面は、そのような教育を受けた奴隷たちが問題ではあるが、一番難しい問題は、教育に従事した人々の動機である。つまり、何らかの利益を目的に奴隷教育に従事した人々がいたことである。教育を受けた奴隷たちの動機を理解することは比較的容易であるが、奴隷を教育することに何の利益があったかを追求することは大変むずかしいが、なんとか見通しをもつことができた。
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[Publications] 小林雅夫: "ローマの女医,助産婦" 早稲田大学文学研究科紀要. 41. 43-55 (1996)
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[Publications] 小林雅夫: "ローマ社会の医師" 早稲田大学文学研究科紀要. 38. 171-185 (1993)
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[Publications] 小林雅夫: "古代ローマの人口問題" 科学史研究. 184. 224-227 (1992)
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[Publications] 小林雅夫: "ローマの軍医" 早稲田大学文学研究科紀要. 35. 43-56 (1990)
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[Publications] 監訳 小林雅夫: "古代の旅(ライオネル・カッソン著)" (株)原書房, 424 (1998)
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[Publications] 監訳 小林雅夫: "古代ローマ文化誌(フリードマン著)" (株)原書房, 194 (1996)