1997 Fiscal Year Annual Research Report
アル・ジャフル盆地の表採資料の分析とレヴァント地方内陸部新石器文化の比較研究
Project/Area Number |
08610403
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (90238527)
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Keywords | ヨルダン / アル・ジャフル盆地 / 新石器文化 / 金石併用期 / 石器 / 遊牧 / ヒツジ / ガゼル |
Research Abstract |
本研究は2年計画であり、平成9年度はその最終年度に相当する。平成9年度の目標は、1.前年度の整理作業を基に資料のデータベース化を図ること、2.アル・ジャフル盆地の先史文化を内陸部乾燥地帯の枠組みの中で比較研究すること、以上の二点にあった。以下のような成果・見通しが得られた。 1.データベース作成: 表採資料の基本的属性・計測データ・実測図の各項目を網羅したデータベースを作成した。今後、若干の修正を加えた上で、ヨルダン国の遺跡データベースに提供の予定である。なお、写真画像データについては容量の問題があり、一部の資料を処理するに止まった。 2.比較研究: 以下のような見通しが得られた。 (1)比較研究の結果、アル・ジャフル盆地の表採資料が、中期・後期旧石器時代から新石器時代後期・金石併用期・前期青銅器時代に至るまでの、きわめて広範な内容を含んでいることが判明した。従って、レヴァント地方内陸部先史文化の比較研究にとって大きな障害となってきた地理的空白(つまり、アズラック盆地とネゲブ・シナイ半島との間の調査空白地帯)が、アル・ジャフル盆地によって埋められるという見通しが得られた。 (2)表採遺跡の中で最も注目されるJF9503遺跡の年代は、主にネゲブ・シナイ方面との比較によって、紀元前4千年紀後半あるいは同3千年期の初頭であることが判明した。 (3)JF9503遺跡の表採資料が、羊毛刈りに使用されたと言われている特殊な石器(Tabular scraper)とそれを製作するための石核類を多く含んでいることが判明した。従って、この遺跡はTabular scraperの製作址として最初の確認例となる。この遺跡を中心にTabu1ar scraperの交易網を追跡することによって、初期遊牧民と都市定住民・農耕民との間の交易関係を具体的に探ることが可能になった。
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