1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08610412
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
山崎 信二 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 考古第三調査室長 (10090375)
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Keywords | 軒瓦の同笵関係 / 瓦自体の移動 / 出張製作・出稼. / 軒平瓦の顎はりつけ・折り曲げ / 軒平瓦の瓦当はりつけ / 瓦当はりつけの地域(A系統) / 中世全期を通じ顎はりつけ(B系統) / 丸瓦吊り紐による年代細分 |
Research Abstract |
今年度は建造物の屋根に葺かれ、解体修理の際におろされた瓦を中心に,西は愛媛県松山市から東は宮城県松島にいたる27箇所の中世瓦を現地調査した。 (i)年代的には,全国共通で,中世I(1180〜1230).中世II(1230〜1260)、中世III(1260〜1300).中世IV(1300〜1333).中世V(1334〜1380).中世VI(1380〜1430).中世VII(1430〜1500)中世VIII(1500〜1570)の8期に編年した。 (ii)同笵瓦は,中世I期では東大寺へ瓦を供給した岡山県万富窯の瓦、東寺へ瓦を供給した兵庫県林崎三本松瓦窯の瓦のほか.鎌倉極楽寺出土の瓦が京都壬生寺や大阪四天王寺と同笵であることを確認した。中世III期では兵庫県円教寺瓦が奈良県唐招提寺・薬師寺・法隆寺などと同笵。中世IV期では尾道浄土寺の2種の軒平瓦が奈良県大安寺と同笵。中世VII期では,和歌山県根来寺の2種の軒平瓦が奈良県薬師寺と同笵。中世VIII期では大阪府池田市久安寺の瓦が.奈良県薬師寺と同笵であることを確認した。また,奈良県と京都府との間には,多数の同笵瓦があることを確認した。 (iii)製作技法から地域別の状況を把握した。まず、大和と鎌倉の軒平瓦は,中世I・IIの段階では、「顎はりつけ」「折り曲げ」であるが、中世IIIから中世VIIまでは「瓦当はりつけ」になる。これをA系統と呼ぶ。これに対し,大阪府の摂津・和泉では中世全期を通じて「顎はりつけ」の技法が存続している。これをB系統と呼ぶ。A・B両系統が存在するのは,播磨や紀伊であり,播磨では中世IIIの段階で両系統で存在し,中世VIでは円教寺例(A系統)と如意寺・鶴林寺例(B系統)との間に、文様構成や製作技法の点で著しい差が出てくる。広島県尾道・福山周辺では中世IVからVIIを通じてA系統であるが.次第に尾道的なものを生み出し、中世VII期には備前で造瓦をおこなっている。関東については、おおむねA系統であるが、東京都浅草寺のようなB系統のものも出現している。
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